「おっぱい触らせてください」これが次世代のモテ男子なのか? 草食系肉食男子が登場!

マンガ

更新日:2016/1/8


『アヤメくんののんびり肉食日誌』(町 麻衣/祥伝社)

 少し前に、「草食系男子」なるものが流行った。その際、世の中の女子は「基本的には草食系で、だけどいざという時には押しが強くて、恋愛面ではリードしてくれる、そんなステキな男子はいないかしら」と都合の良いことを思ったものだ。

 そんな時代に登場したのが、本書のヒーロー、アヤメくん。『アヤメくんののんびり肉食日誌』(町 麻衣/祥伝社)には、これが次世代のモテ男子では!? と思わせる草食肉食系男子が登場する。

 舞台は某大学の研究室。生物学科の学生たちは、日々爬虫類や鳥類などの解剖に明け暮れている、普通の大学生よりは「風変わり」な人たちばかり。中でも1年生としてゼミに参加することになった菖蒲瞬(あやめしゅん)は、帰国子女ということもあってか、やや変わり者。見た目は少し野暮ったく、いかにもな草食系だ。恐竜オタクの彼は、「現在生きている生物なら哺乳類が好き」らしい。

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 そんなマイペースでのんびり屋のアヤメくん。父親は有名な考古学者で、将来は彼も優秀な研究者になる……と思いきや、アヤメくんに恋愛をかけ算したら、「小学生」になってしまった……!

 本作のヒロイン、椿は、骨格オタク。死んだ鳥がいると連絡を受けたら、すぐに取りに行き、解剖を楽しみにするような女の子。専門は鳥と爬虫類らしいが、男性の骨格も大好きで、つい「あの人を解剖してみたい」なんて思ってしまう。一見「リア充」っぽい容姿の椿は、偶然にも、アヤメくんに自分の胸を見られてしまう。その時アヤメくんは何を思ったか、「おっぱい触らせてください」と口にしてしまうのだ。

 「は?」と思いながらも、ひるむような椿ではなく、「解剖させてくれるならいいわよ」と返す。解剖は、死んでからではないとできない。つまり、アヤメくんが生きているうちは触らせないわよ、と遠回しにお断りしたのだ(出会って間もないし、彼氏でもないなら、当然だろう)。

 「中身が小学生レベル」と椿はうんざり。だが、アヤメくんは草食系でありながら肉食系なのだ。椿の元恋人に話を聞きに行ったり、「触りたいと思うのは先輩だけです」と言ったり、突然キスをしたり(しかも2回も!)する。当然のように言われるものだから、ついつい椿もアヤメくんのペースに巻き込まれ、遂には身体まで許してしまう(その押しの強さは、草食系のようで、肉食系の技術を持っている。矛盾していると思われるかもしれないが、それが次世代モテ男子なのだ!)。

 もちろん、気持ちの面でも強引なアヤメくんに、椿は少しずつだか心惹かれていたのだ。椿の元カレが、椿のことを「あの解剖女」や「おっぱいでけぇし」など、モラルのない発言をした際には、「そんなことは聞いてません」と普段ののんびりを一転、鋭い睨みをきかせる。

 昔の椿が今とは違い、おデブちゃんの冴えない女子だったと分かっても、「オタマジャクシがカエルになるように、イモムシがチョウになるように、先輩は『変態』を遂げたんですね……」と妙な感動を覚え、「カッコいい」と目を輝かせる。

 この発言、女子としては、「ありのままの自分」を受け入れてくれているのだと、とても嬉しい反応なのではないだろうか。昔の不細工な写真を見てもひるまない、アヤメくんの(ちょっと変わった)男らしさに、椿も胸キュンなのだ。

 また、見所はこの二人だけではない。研究室のメンバーは個性的なキャラクターばかり。チャラ男でちょっとアホっぽい高山に、黒髪メガネの真面目リーダー里中くん。この里中くんの「不遇ぶり」がまた面白い。こんな魅力的なゼミメンバーが、のんびり草食肉食系のアヤメくんと解剖大好き女子、椿の、おかしな恋路を見守るのだ。このマンガ、面白くないはずがない。

文=雨野裾