ネガティブ姫×チャラ男の恋の行方は? 平安ロマンスの巨匠が描く日本版シンデレラ・ストーリー『おちくぼ』の面白さがクセになる!

マンガ

公開日:2016/3/18


『おちくぼ』(山内直実/白泉社)

 シンデレラと言えば、意地悪な継母と姉たちにいじめられる美しい娘が魔法使いに助けられて、舞踏会でイケメン王子に見初められめでたく結婚する…女の子なら誰もが憧れる世界的に有名な童話。実は日本にも似たような物語があるのをご存じでしょうか。それが平安時代に書かれた『落窪物語』なのです。この古典作品を、平安のラブロマンスを得意とし、代表作に『なんて素敵にジャパネスク』がある山内直実先生がコミカルに描いたのが『おちくぼ』(白泉社)です。3月18日には、2巻が発売されました。

 裁縫の腕がピカイチで、容姿ももちろん美しい中納言家の姫は、実母と死別したのち義母である北の方に引き取られたものの、いじめられ「落窪の君」(寝殿の隅にある落ち窪んだ畳の部屋の意)と呼ばれる日々を送ります。みすぼらしい恰好をさせられ大量の針仕事を押し付けられながらも、大好きな裁縫を楽しみながら慎ましく暮らしていました。そんな姫を心配して一緒に付いてきた乳兄弟のあこきは彼女を支えながら、北の方の横柄な態度に憤慨。どうにかして姫を高貴な身分の殿方に嫁がせようと恋人の惟成と協力し、地位あり家柄よしのイケメン公達である、藤原道頼(ただし女好きで都イチの遊び人)に姫の存在を知らせます。

 姫の事をすっかり気に入って頻繁に文を送る道頼ですが、極度のネガティブ思考のため自分を蔑んでしまい、なかなか心を開かない姫。道頼は思い切って家の者の不在を狙って姫に会いに行きますが…。果たして固く閉じられた姫の心の扉は開くのでしょうか。

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 「元気」「ヘンタイ」「ドジっ子」と、なにかと個性が際立つキャラが多い女性コミックにはめずらしく、主人公の姫はおしとやかで針仕事とお琴が得意な絵に描いたような大和撫子。地味かと思いきや、姫を取り巻く個性派揃いの登場人物たちと上手くからみ合って逆に今時ないキャラが新鮮! ときに裁縫マニアっぷりを垣間見せて女房のあこきを呆れさせるシーンもありますが、そこがまた無邪気で可愛い! 読んでいるこちらも思わず守りたくなる、それが落窪の君の魅力なのでしょう。

 どうしようもないチャラ男だけど、生まれて初めて姫に対して“好き”という感情を持ちはじめる道頼。あこきほどではないですが「私の可愛い姫を絶対に傷つけるなよ」と思いながら、姫と道頼の関係が今後どう展開していくのか目が離せません!

文=挾間みゆき

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