『ゴシップガール』好きにオススメ! LAのクラブが舞台!不安定な友情を描く、ハリウッド×青春×ミステリー小説

文芸・カルチャー

2016/5/13


『見えざる敵』(アリソン・ノエル/ハーパーコリンズ・ジャパン)

16ケ国語に翻訳され、世界同時発売。作者は「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラー作家のひとりで、ヤングアダルト向け小説のヒット作多数。物語の舞台はLA・ハリウッドのナイトクラブ、主人公はライバル同士のティーンエイジャーで、若手有名女優の失踪を巡るミステリー。

そう聞いただけで、アメリカのドラマ「ゴシップガール」「プリティ・リトル・ライアーズ」のファンや華やかなセレブリティの世界に興味を持つ人は、心惹かれるだろう。随所にゴシップと最新ファッションがちりばめられ、スピーディな展開のサスペンスである『見えざる敵』(アリソン・ノエル/ハーパーコリンズ・ジャパン)は、まさに人気のティーンドラマのよう。しかし、ただキラキラと華やかなだけではなく、野心的な登場人物たちの不安定な心をのぞき込むような影の部分も細かに描かれているのが、本書の魅力でもある。

LAのナイトシーンで絶大な影響力を持つ経営者イーラ・レッドマンが、自身の経営する人気クラブの宣伝係を募集した。といっても、ただ面接して採用するわけではなく、応募者同士がどれだけ有名セレブを連れてきたり、話題を集める企画を立てたりできるかを競い合うコンテスト形式のものである。

大金を手にし、ハリウッドで顔を売りたいと願う野心的な応募者のなかに、ライラ、トミー、アスターの3人がいた。有名人のゴシップを扱うブログを細々と続けているライラは、NYのジャーナリスト養成校に通う資金稼ぎに応募した。ミュージシャンを夢見るトミーは、経営者のイーラに対してある個人的な興味があり、近づくのが目的だった。大金持ちの家に生まれたアスターは女優の卵で、クラブに訪れるハリウッドの大物に顔を売るチャンスと考えている。ライバル同士である彼らは、お互いにいがみ合い、探り合い、だまし合いながらも、不思議な縁から友情を築いていく。

そんな彼らのターゲットとなるのが、ハリウッドの人気スター、マディソン・ブルックス。演技力のある女優ながらパーティガールと噂され、彼女を呼び込むことのできたクラブは若者の人気スポットに躍り出る。なんとしてでも彼女に近づき、クラブに来てもらおうと躍起になるライラたち応募者だったが、次第にマディソンがただの「パーティ好きなセレブ」ではなく、非常に謎めいた人物であることがわかってくる。そしてある日、マディソンは忽然と姿を消す――。

出生に秘密があるらしいミステリアスなマディソンによる、陰謀とスキャンダルに満ちたハリウッドライフ。そして、野心的なライバル同士の駆け引きと裏切り、そして友情。この二軸が絡み合いながら、物語はスリリングな展開を見せる。そしてマディソンの正体、ライラたち3人の不安定な友情(恋愛要素もあり)の行方などが、少しずつ明らかになっていく。

登場人物はほぼ全員が成功を渇望し、時には人を蹴落としながら計算高く生きる。その姿は、ドラマや映画で観るティーンエイジャーの姿より、さらにアグレッシブで生々しい。大きな夢に向かって突き進んでいるが、本当は自信がなくて不安定。誰を信じたらいいのかわからず、不安のあまり相手に噛みついたり、仮面をかぶって接したりしてしまい、友達を作ることが苦手。ライラやトミー、アスター、そしてマディソンさえも、極端な形ではあるけれど「確かにティーンエイジャーのころって、こんな一面があった」と思い出す存在だ。まるで割れやすい卵のような思春期。

ただ、彼らは不安定でありながら、「どうせダメだよね」「私なんて無理だよね」という自虐的な面は一切ない。本当に夢を叶えられるのかと不安な心を、自力で道を切り開こうとする強気な心で押しのける。身ひとつで生き延びてやるというライラたちの力強さに触れると、こちらまで生きるパワーがわいてくる。

きらびやかなハリウッドの別世界ぶりを楽しむのもよし、登場人物のひとりに感情移入して応援するもよし、彼らから懐かしい青春時代を思い返すもよし、華やかさの裏側に潜むミステリアスな謎に挑むもよし。さまざまな楽しみ方ができる一冊だ。

文=富永明子