「ぼけっと」「ワビサビ」「ツンドク」も収録!世界34カ国から「翻訳できないことば」を集めたユニークな単語集が各所で話題!

文芸・カルチャー

2016/5/29


『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース:著、前田まゆみ:訳/創元社)

ある女性が海外で日本語の「もったいない」という言葉を使ってスピーチをしていたことをご存じだろうか。その女性はワンガリ・マータイさん。ノーベル平和賞を受賞したすごい方だ。残念ながら2011年に亡くなられている。そんな偉大な方が、なぜ「もったいない」という言葉を使ってスピーチをしていたのか。それは、2005年に来日した際、その言葉の意味に感銘を受けたからだそう。マータイさんの母国であるケニアには、「もったいない」という意味を持つ言葉はなかったのだ。

この「もったいない」のように、一言では言い表せない表現や感覚のつまった言葉は世界中に存在する。『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース:著、前田まゆみ:訳/創元社)は、そんな世界中の「翻訳できない言葉」を集めて、エラ・フランシス・サンダース氏の感性豊かな解説としゃれたイラストで紹介している世界一ユニークな単語集だ。読んでいると、自然と笑顔になる。不思議で心温まる一冊となっているので、思いの丈を本書に添えて、大切な人に贈ってみてもいいかもしれない。贈った方も、贈られた方も、きっとロマンチックな気分になるだろう。

ひとことでは訳せない、世界のユニークな単語たち

本書では、50以上のユニークな単語たちが紹介されている。そこで、個人的に印象に残った言葉をいくつか紹介したい。

『フォレルスケット』 【ノルウェー語 形容詞】
(訳 語れないほど幸福な恋に落ちている)

本当に素敵な言葉だ。本書のイラストを見ていると、なんだか本当に、恋に落ちたような幸福な気分がやってくる。今、フォレルスケットな人も、そうでない人も、この言葉を唱え続けたら、もっといいことがあるかもしれない。

『アキヒ』 【ハワイ語 名詞】
(訳 だれかに道を教えてもらい、歩き始めたとたん、教わったばかりの方向を忘れたとき、『AKIHIになった』と言う)

このような「『アキヒ」』な方はしょっちゅういるだろう。私もたまにそうだ。そして、これは魔法の悪口だ。悪口も、意味が通じなければ悪口にはなるまい。私は明日からさっそく先輩に使おうと思う。

『ヤーアブルニー』 【アラビア語 名詞】
(訳 直訳すると「私があなたを葬る」。その人なしでは生きられないから、その人の前で死んでしまいたい、という美しく暗い望み)

ドキッとさせられる言葉だ。著者はこの言葉を「ロマンチックと病的との中間」と述べており、私もそう感じる。言葉は文化から生まれる。これもまた、アラビアの文化の1つかもしれない。

本書を読んでいると、なんだか心温まるような、切ないような、感情を揺さぶられる感覚を得た。著者も、

この本が、読者の皆さんにとって、忘れかけていたなにかを思い出すものであったり、または今まではっきりと表現したことのなかった考えや感情に言葉をあたえるものであればと願っています

と述べている。本書は読んだ人の心を掘りおこす力があるのかもしれない。

最後に、せっかくなので、本書に登場する言葉を使って文章を書いてみた。訳は載せない。それは本書を手にした方だけのお楽しみだ。

親友に裏切られ、グラスウェンされた。悲しい。
モーンガータの下、寂しく歩いた。ちょっと泣いたかもしれない。
そんなとき、声をかけてくれたのが、ウブントゥなあの子だ。
その女の子とサマルした。本当にコンムオーベレだった。
ヘゼリヒ。まさかそんな感情を彼女に抱くなんて。

そんな安っぽい物語をピサンザプラの間に考えた。
まあ、ボケっとしているよりはましか。

うむ…。我ながら、まさにジャユスだ。

文=いのうえゆきひろ