天才作家・真藤順丈(新人賞4冠達成)の新感覚ハードボイルドに息を呑む!

文芸・カルチャー

2011/9/5

 2008年から2009年までのわずか1年の間に、ダ・ヴィンチ文学賞、日本ホラー小説大賞をはじめとするエンタメ小説賞を立て続けに4つも手中に収めた驚異の新人――それが真藤順丈だ。

びっしりと物語がつづられた地図帖、そこに秘められた謎を追う『地図男』、遺体から様々な製品を作り出す「遺工」、特殊な生業を守り続ける家系を描いた『庵堂三兄弟の聖職』、国民に絶えず順位をつけるディストピアをつづった『RANK』など、特異な舞台設定に定評のある著者。彼が新たに 挑んだのは「農林畜産ハードボイルド」。そのタイトルは『畦と銃』(講談社)。

「自然は美しい、田舎に帰ろうとか言うつもりはまったくなくて。田舎に生まれ育った、欲にまみれてる、のっぴきならないヤツらが暴れ回る話をやろうと思った」と著者は語る。  若き農夫とあこぎな大地主の対立を描いた第一部では農業を、第二部の林野庁の女性職員が引き起こす抵抗運動で林業を、そして第三部の牧場を守るティーンエイジャーの活躍では畜産を、事前の現地取材をベースにそれぞれ活写。

著者はするすると読めることが評価の対象となる昨今のエンタメ小説の流れに抗うように“文体”を追求する。村独自の専門言語と、野趣に富んだ方言混じりの独特な文体は、時として違和感を感じるものの、いつまでもその余韻を引きずる先鋭的な描写に、読者はいつの間にか魅せられているはずだ。

彼は「今回は最高のものを出した。次はさらに上、という姿勢で小説を書き続けていきたい」という。本作はまぎれもなく彼の新境地といってもいい。異色作の送り手にふさわしい“棘”のある作品に読者は息を呑むことだろう。

(ダ・ヴィンチ6月号 ダ・ヴィンチピックアップより)