フォトジェニック猫写真の秘訣は、猫と人との信頼にアリ。『アイドル猫のつくりかた』

文芸・カルチャー

2016/6/23


『アイドル猫のつくりかた』(佐々木 道弘:監修、関 由香:写真/扶桑社)

「あをによし」のあとに「奈良」が来るのと同じくらい、「アイドル」の前には「なんてったって」がついてしまう症状は、アラフォーおよびアラフィフの皆さまにはご理解いただけるものかと存じます。

そして「アイドル猫」と言ったら、なんてったって皆々さまのご自宅にいる猫が、飼い主にとっての唯一無二のアイドルで、この事実は他の誰かがどう言ったって揺るぎません。ただ一つ弱点があるとすれば、それは飼い主にしか見せないアイドル姿なのです。カメラの前で「アクション!」とカチンコを鳴らしても「なぜ私が行う必要があるのか」「それよりご飯の準備をしろ」「取りあえず眠るわ」という表情を収めるのが関の山。まあ、それだけでも十分猫分補給には足りますが、テレビや雑誌で見かけるプロのアイドル猫の表情がいかに卓越したものかと、改めて感じるわけであります。

本書『アイドル猫のつくりかた』(佐々木 道弘:監修、関 由香:写真/扶桑社)は、動物プロダクション「佐々木動物プロダクション」(現在は「グローバル・アニマルアクト」)に”所属”する、テレビ番組・CM・映画で活躍するアイドルスター猫の写真集。WebサイトやSNS上のどこかで見たことのある、あの猫さんたちが織りなす、出会い、恋、成就、プロダクションでの暮らし。そして最後はさすらいの裸の大将が登場する、ほんわかストーリー絵詞であります。

肝心の「つくりかた」は、終わりのほうにちょこんと添えられております。「つくりかた」と銘打っているわりには、ボリュームが少ないように見えますが、その理由は明白。「こうしたら、思い通りに動く」なんてインスタントな方法はなく、撮影する側が求めている表情や動きを、カメラの前で猫にしてもらうには、「日々共に愛情を持って接して、信頼関係を築くこと」に尽きるのです。

佐々木さんは、動物たちが仕事をするうえで、「小道具」扱いではなく、役者として認めてもらえるようなプロダクションにしたい、と常々語っていました。動物プロダクションへの依頼のなかには、生き物である動物たちを、小道具感覚で捉えているような内容も多々あったそうです。だからこそ、必要なときにレンタルするスタイルを取らず、動物たちのお世話やしつけを自ら行い、プロとして育てることを信念にしていました。

「奇跡の一枚」を常に生み出し続ける信頼関係。それを保つ努力が、私たちを魅了する、アイドル猫の表情の裏に隠れているわけです。『アイドル猫のつくりかた』を知ることは、すなわち、何気なく見ていたプロ猫たちの表情のバックボーンを垣間見ること。この1冊を読み終えたあと、解像度の高まった目でわが家の猫を見ると、いままで見過ごしていた、なんてったってアイドル猫の「声なき声」が聞こえてくるものと思われます。

文=猫ジャーナル