コンプレックスに悩むすべての人へ贈る、“自分嫌い”脱却法

暮らし

公開日:2016/7/1


『こんな私が大嫌い』(中村うさぎ/イースト・プレス)

 あなたは自分のことが好きですか? 自分に不満を感じコンプレックスを抱いていませんか。生きていると自分のありのままの姿や現状を受け入れることができずに思い悩む場面があるものです。そんなとき、あなたは友達や家族に相談をしますか。相談後、周りからのアドバイスで気持ちはすっきりとしましたか。

こんな私が大嫌い』(中村うさぎ/イースト・プレス)は決して“大人の綺麗事”ではない、著者自身の経験によるリアルな言葉で現実的なアドバイスを与えてくれるエッセイです。中高生時代から自分の顔や性格に強いコンプレックスを持っていた著者が結婚し離婚もし、劣等感の中で買い物依存症となり借金をし、整形手術で顔を変えてと、さまざまな葛藤と共に生きた50年の豊富な経験をもとにアドバイスを綴っています。

 彼氏が別の人に心変わりして失恋したとき、「私が可愛くない顔をしているから振られたんだ」と泣きついたら友達は「十分に可愛いよ。相手の趣味が悪いだけ」と慰めてくれるかもしれません。優しい家族は大人な対応で「大丈夫。あなたにはあなたの良さがある」と他の魅力について語ってくれるかもしれません。でもその言葉だけで納得できずに「そんなこと言ったって実際に振られているじゃない!」と思ったりしませんか。

 自分嫌いな人にはこんなタイプの人がいます。「こんな私なんて」と卑屈になってしまい他人と対等な付き合いができない人。自己主張ができずに損をしてしまっている人。他人の顔色をついうかがってしまう人。これらの人たちは一見すると謙虚な人ですが実は自己評価が低い“生き方が下手な人”なだけと中村氏は言います。本当の“謙虚”とは「自分の価値がちゃんとわかっていながら、決してうぬぼれない人」だからです。

 そのような人たちが“自分嫌い”から脱するためにはどうすればよいのでしょうか。「自分を評価してあげよう」「自信を持とう」と口で言うのは簡単ですが自信を持ったりなくしたり揺れ動くのは人間として当然のことです。簡単に自信が持てるようになるくらいなら元々悩んでなどいないことでしょう。中村氏は言います。自己評価が低すぎる人は失敗を恐れる人であると。特にこのタイプの人は失敗の原因が「自分がダメなヤツだから」と考えてさらに自信喪失に向かうと指摘します。視野を狭め周囲の世界もこれからの人生も何も目に入らなくなり“失敗した自分”しか見えず自分のことで頭がいっぱいになってしまうのです。

 自分のことで頭がいっぱい?

 そうなのです。“自分嫌いの人”とは実は自分のことばかり考えている“自分好きの人”だという単純ながら衝撃的な事実が突きつけられます。「自分に自信がないの」なんて口にしながら実は“完璧な理想的な自分”を思い描いていて自分がそこに至らないと許せなくなってしまうというリアル。“自己評価の低すぎる人”は謙虚で自分に厳しいように見えて実は誰よりも傲慢で自分を高く見積もりすぎているうぬぼれ屋かもしれないのです。“「他人の悩みは軽く見えて、自分の悩みは重いと感じ」る要因は、自分にはもっと素晴らしい人間になれると期待しているのに他人には完璧であることを期待していないからだ”という自分の考えの現実を突きつけられます。

 自分嫌いの人が実は自分好きの人だというのなら悩みは解決かというとそんな簡単な話ではないのが難しいところでしょう。嫌いな顔を整形して好きな顔を手に入れたのに“自分嫌い”が解決しなかった著者が経験から語る“自分嫌い”脱却策は、自分を“好き”でも“嫌い”でもなくすこと。自分自身への感情から距離を置き、自分を少し突き放すことだといいます。

 内閣府の日本の若者の自己否定に関する調査によると自分を好きではないと答えている人の割合は世界の他の国に比べてダントツで高く、ある自治体による調査では年齢を重ねるごとにその気持ちは上がっているという結果もあります。

 もし今、自分に自信がなくなり自分嫌いに悩んでいたらぜひ本書を手に取ってみてください。現実に目を背き自分嫌いをごまかして生きていることが辛いと思ったら試しにページをめくってみてください。著者のリアルな経験のもとで綴られる数々の言葉が大きな説得力となって、固くなっていたあなたの奥底にある“自分嫌い”の心を少しずつ溶かしてくれることでしょう。自分の現実は変えられない。けれど「出口のないトンネルはない」のですから。

文=Chika Samon