うつ、アレルギー、自律神経失調症…自己治癒力を「見える化」する最先端のバイオロジカル検査とは?

健康・美容

公開日:2016/10/30

『自己治癒力を高める医療 実践編 バイオロジカル検査でわかるあなたの「治る力」』(小西康弘/創元社)

 体調が悪くなって病院へ行くと、医師の診察や検査によって診断名がつけられ、症状に応じた薬を処方されるのが一般的な流れだ。一方、『自己治癒力を高める医療 実践編 バイオロジカル検査でわかるあなたの「治る力」』(小西康弘/創元社)の著者のクリニック(小西統合医療内科)では、患者の自己治癒力を調べて結果に応じた医療用サプリが処方される。風変りな治療法にいかがわしさを感じるかもしれない。「そもそも、自己治癒力って調べられるの!?」と疑問に思う人もいるだろう。実は、アメリカでは「分子栄養学」や「機能性医学」といった新しい分野が発達してきており、自己治癒力を高めることによりさまざまな症状を治癒させているという。通常の検査が臓器レベルなのに対し、最先端の「バイオロジカル検査」では細胞や分子レベルの状態まで確認できて、漠然とした自己治癒力を「見える化」することができる。著者のクリニックでは、そうした最新の医療をいち早く取り入れているのだ。

 著者は、病気になるプロセスを川にたとえている。

「上流」には心や身体のいろいろなストレスが関係しています。長期間にわたってストレスがかかり続けると、私たちの身体はだんだんとバランスを崩していきます。これが「中流」での「自己治癒力の低下した状態」です。そして、「下流」になるといろいろな慢性疾患が起こってくるのです。

 現代医学では、科学的な根拠(エビデンス)に基づいて医療を行うことが重要視されている。しかし、頭痛やめまい、身体のだるさなど検査をしても異常が見つからない漠然とした症状に悩まされている患者も少なくない。そんな場合は、「ストレスが原因」「自律神経の失調」「(仮面)うつ病」などの診断が下され、表に現れている症状をとりあえず抑えるために痛み止めや抗精神薬などが処方される。病気になるプロセスの「下流」のみにアプローチする「対症療法」では、「根本原因」に目を向けないため、病気の完治は難しくなってしまう。著者のクリニックにも、10年以上複数の抗うつ剤を飲み続けている患者が何人も訪れるそうだ。本書では難治性のアトピー、うつ病、慢性疲労症候群、起立性調節障害などの疾患に長期間悩まされた人たちが、自己治癒力を高める医療によって根本的に改善していく様子が記されている。

advertisement

 では、自己治癒力を「見える化」するバイオロジカル検査とは、一体どのような検査なのであろうか。「バイオロジカル」は「生物学的な」という意味を持ち、尿や便、毛髪などの検体を検査することにより、細胞レベルや分子レベルでどのようなことが起こっているかを知ることができる。病気になるプロセスの「中流」である自己治癒力の状態が明らかになるのだ。私たちの身体のすべての細胞には、細胞が正常に機能するためのエンジンの役割をする「ミトコンドリア」が存在する。「自己治癒力が低下した状態」とは、すなわち「ミトコンドリアの機能が低下した状態」と言い換えることができる。バイオロジカル検査のひとつである「尿中有機酸検査」では、ミトコンドリアの機能を見ることによって、自己治癒力を「見える化」できるという。

 自己治癒力の低下には、腸内環境の乱れが大きく関係しているらしい。そういえば最近、アレルギー疾患と腸内環境についてよく耳にするようになった。バイオロジカル検査では、こうした腸内環境のバランスも「見える化」することが可能だ。本書では、腸内環境が乱れることによって起こるさまざまな弊害や病気に至るメカニズムについて、順序立てて詳しく解説されている。いかに腸内環境が私たちの身体に多大なる影響を及ぼしているかを知って、驚くことだろう。

 著者は、本書を一般人だけでなく医療関係者にこそ読んでほしいと願っている。それは対症療法を否定するためではなく、お互いの良いところを取り入れて補い合うため。医療サプリによる治療は効果が出るまでに時間がかかるので、その間は対症療法で患者の苦痛をやわらげるのが有益であると考えているのだ。こうした統合医療が一般化すれば、「自己治癒力を高めるために病院へ行く」、そんな時代が来るかもしれない。

文=ハッピーピアノ