小池都知事の座右の書!「空気」による支配が日本企業をダメにする!「過去の失敗」に学ぶ組織を“敗戦”させない方法とは?

社会

公開日:2016/12/6

『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎/中央公論新社)

 「何をどうやって間違ったかというのは、大体失敗に共通することで、要は楽観主義、それから縦割り、(中略)こういうことで日本は敗戦につながっていくわけですけれども、都庁は敗戦するわけにはいきません」(※1)。9月23日の定例記者会見で小池百合子都知事は、彼女の「座右の書」・『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎/中央公論新社)を引き合いに出し、築地市場の豊洲移転問題について発言した。あらゆる問題が山積する東京都。その首長としてその解決に取り組んでいく小池都知事の活躍に期待が高まるなか、その「座右の書」にも今注目が集まっている。

 小池都知事の「座右の書」・『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』は、ミッドウェー作戦やガダルカナル作戦などでの失敗をケーススタディとして旧日本軍の組織的欠陥を分析、現代の組織への教訓として提示した名著。初版が発行されたのは30年以上前だが、小池都知事をはじめ、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、三菱地所の杉山博孝社長、ヤマトホールディングスの木川眞会長ら、多くの経営者が愛読書として紹介する根強い人気を持つ書籍だ。軍隊は、官僚制組織の究極の姿。その失敗の原因には、現在の日本が抱えている問題に通じるものがある。

 明確な意識の共有がされず、目的がはっきりしないまま行われた作戦の実行。過去の成功例に囚われているうえに、長期的展望がなく、短期的にしか練られていない戦略。根拠なき楽観主義。陸軍と海軍の間の摩擦、情報共有の不徹底…。その結果、多くの人命が失われた。そしてこの旧日本軍の失敗は、決して人ごとではない。

advertisement

 特に、合理的思考でなく、ある種の「空気」によって支配されていたという旧日本軍の欠陥は、現代の日本企業においてもありがちな問題ではないだろうか。旧日本軍は、結果よりもプロセスを評価し、戦闘結果より、リーダーの意図や、やる気を評価した。あいまいな評価基準は、論理性よりも声の大きな者の突出を許容していた。

 選りすぐられたエリートによって合理的に作られているはずの組織であっても、結局は、非公式の人間的なつながりによって意思決定がされてしまう。理性的な判断ではなく、その場の空気が議論の行方を決める。皆が空気を読んでしまい、誤りが是正されることはない。マネジメントのミスが悲劇を招く。そして組織は破綻してゆく。

 歴史は繰り返すと言われるが、同じ失敗を繰り返すヘマをおかしてはならない。この本に書かれている「過去の失敗」は、現代日本のあらゆる組織が抱える大きな問題に通じている。失敗を食い止めるために、ここから学ぶべき教訓は計り知れない。“敗戦するわけにはいかない”すべてのビジネスパーソン必読の一冊だ。

文=アサトーミナミ

(※1)東京都公式サイト参照