野村周平主演で実写映画化&TVアニメ化決定! ”能力者の街”で暮らす高校生が過去をやり直し、未来を変える青春ミステリー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

 忘却は救いだ。嫌な出来事を忘れ去ることは、心の傷を癒すことに繋がる。だが、もしも、どんな悲しみも苦しみも忘れることができない記憶能力を持ってしまったとしたらどうしたら良いだろう。忘れることのできない記憶に抗うためには、何ができるだろうか。

『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』(河野裕/角川文庫)

 『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』(河野裕/角川文庫)は、特別な能力を持つ者たちが集う街・咲良田で暮らす少年少女の姿を描いた青春SFシリーズ第1巻。元々、スニーカー文庫で人気を集めていた「サクラダリセットシリーズ」に大幅な修正を加え、新装版として刊行されたもので、2017年には野村周平主演、ヒロイン役に黒島結菜で実写映画化、テレビアニメ化が決定している。異能を持つ少女たちの心の葛藤やスリリングな展開は、これからますます話題を呼ぶこと間違いなしだ。

 主人公は、特殊能力を持つ2人の高校生。浅井ケイは、どんなことがあっても見聞きしたことを絶対に忘れない記憶保持能力を持ち、春埼美空は世界を3日間巻き戻す能力「リセット」を持つ。春埼はケイとは異なり、「リセット」前の世界の記憶を失ってしまうため、2人はそれぞれの能力を組み合わせることで初めて、過去をやり直し、現在を変えることができる。ある時、2人の元に舞い込んできたのは、車に轢かれて死んだ猫を救ってほしいという依頼。2人は「リセット」で3日前に戻り、猫の行方を突き止めようとするが、なぜかその陰で、依頼人・村瀬陽香が不審な行動をしていることに気付き…。この依頼の裏には何があるのか。「リセット」の影響で起こる不可思議な事件の数々を2人はどう解決するのか。

 ケイは、冷静沈着、常に先を見据え、物事の本質に迫ろうとする少年。一方、ヒロインの春埼は感情の起伏に乏しく、何事に対してもほとんど興味を示さないが、ケイには全面的な信頼を寄せる少女だ。ケイはいつでもクールだが、「苦しむ人を助けたい」という熱い感情を胸に秘め、物語の核心に迫れば迫るほど、その想いは強くなっていく。彼の中では、2年前、「リセット」が原因で、ひとりの少女の命が失われてしまったことが尾を引いている。時間を巻き戻し、人々の悲しみを取り除こうとする2人の活動は、少女への贖罪なのか。特殊な能力を持っているならば、その気になればどんなことだって変えることができそうなのに、ケイは「リセット」前の行動や言動を記憶のままに忠実に再現し、未来へ影響を与えないように細心の注意を払っている。しかし、慎重にことを運んでいようとも、事件は起こってしまう。その衝撃と、蘇る過去の心の傷。記憶を持ち続け、忘れることができないがゆえの苦しみに胸が詰まる。

 その他にも、2人が過ごす咲良田には、特別な能力を持つ者たちが数多く集まっている。時間を指定して相手に言葉を届けられる能力を持つ中野智樹、どんな情報でも手に入れることができる「非通知くん」、猫と意識を共有させることで、猫と情報を共有できる野ノ尾盛夏など、どの能力も個性的。一方で、未確認研究会というオカルト研究会に所属する皆実未来は、能力を持たないがゆえに、周囲の同級生たちの能力を羨ましがっている。特殊な能力を持つ者、持たない者を描きながらも、高校生たちの心の葛藤をこの物語では鮮やかに描き出していく。異能を持った少年少女を描いた作品は数多くあるが、個性的で愛らしいキャラクターに出会えるのは、この物語の大きな魅力だろう。

 忘れることができない記憶に抗うためには、幸せな未来を切り開いていくしかない。強さと優しさにあふれ、不可思議が日常になった能力者の街で繰り広げられる少年と少女の物語は、SF好き、青春小説好きのみならず、忘れたい過去と戦うすべての人に読んでほしい作品だ。

文=アサトーミナミ

■『サクラダリセット』原作特設サイト

■映画「サクラダリセット
2017年【前篇】3月25日(土)【後篇】5月13日(土)、2部作連続にて全国ロードショー!
主演:野村周平  黒島結菜  平祐奈  健太郎  玉城ティナ  恒松祐里
原作:河野裕「サクラダリセット」シリーズ(角川文庫/角川スニーカー文庫)
監督・脚本:深川栄洋
主題歌:flumpool「ラストコール」(A-Sketch)
製作:「サクラダリセット」製作委員会
配給:ショウゲート