一流ビジネスマンが毎日同じ服を着るのはオシャレなの?「トレンド」から見る今は“こんな時代”

社会

2016/12/14

『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代 今を読み解くキーワード集』(三浦展/光文社)

 トレンド、もしくは流行には、よくも悪くもその時代の気分や特徴が色濃く表れる。トレンドから見ると今はどんな時代なのだろう。

 本書『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代 今を読み解くキーワード集』(三浦展/光文社)は、時代を表すキーワードや造語をまとめた一冊だ。収められているのは、ながらく社会や消費や都市の動向分析を行ってきた著者が、分析のために生み出したものである。

 たとえば、本書のタイトルにもなっている「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」。2011年に亡くなってしまったが、アップルの創始者スティーブジョブズのトレードマークは、イッセイ・ミヤケの黒いタートルネックにジーパンである。MacにしろiPhoneにしろ、そのデザインへのこだわりはよく知られるところだが、ジョブズ自身のファッションは常に同じ。その理由は彼がパソコンおたくだから、ではなく、服を選ぶための時間を仕事に使いたいから。これはジョブズに限らず、日本でも有名な経営者やコンサルタントたちも、同じ理由で毎日同じ(デザインの)服を着るらしい。特に靴下はまったく同じだそうで、右でも左でも同じ黒い靴下をはく人が多いという。

 そういうわけで、今は服装をとっかえひっかえする人よりも、毎日同じ服を着る人の方がどうもおしゃれ、かっこいい、カリスマだと思われる時代のよう。言い換えると、モノを買わない人のほうがしばしばおしゃれでかっこいいと思われる時代なのであり、消費が伸びない理由のひとつに、所得が多い人もむやみに物を買わなくなったことが一因、と分析できる。

 トレンドはファッションに限らない。

 「中年男性二人連れ」というキーワードがある。ベースになっているのはJR北海道新幹線の広告だ。これは中年男性二人が一緒に新幹線で旅に出た、という設定になっている。お笑い芸人のサンドウィッチマンを起用した広告、といえば思い出してもらえるだろうか。これまでこうした旅行の広告は、若い女性たちのグループ旅行、あるいは中年の夫婦旅行を題材としていたので、このような設定は非常に珍しい。フランス人がこの広告を見て「日本は進んでいる、ゲイが広告に出ている」と言ったという話もあるほどだ。

 この設定が起用された理由として、40歳を過ぎても未婚の男性が増え、男性二人連れで出かけることが珍しくなくなってきたことがあると指摘されている。統計を見ると、45~49歳の未婚男性は、2005年の68万人から2015年は108万人に増加。死別・離別した40代男性も、2005年から2015年に5割増加している。このように「おひとりさま」の中年男性が増えたことが背景にあるようだ。

 本書では、キーワードを「消費」「世代」「少子高齢化」「家族」「都市」という分野ごとに整理しており、ここに紹介したもの以外にも興味深いものが満載である。特に「少子高齢化」や「都市」にからむキーワードは、単なる流行というだけでなく社会の構造変化に伴うトレンドでもあり、誰もに関係するはずだ。

 本書は、今の時代を的確に表すとともに、将来を予見する手がかりにもなっている。今を通して将来までも見えてくるキーワード集、である。

文=高橋輝実

『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代 今を読み解くキーワード集』
【小見出し】シンプル族/クレジットカードを退会する/ワンランクアップからワンランクダウンへ/おさがりからおあがりへ/若い男性の主婦化と老若男女同一市場/中年男性のおうち化/表参道にいらつく/かまやつ女/きれいなおじさん/暗黒女/黒いママチャリ/ポロからボロへ/隠れバブル/中年男性二人連れ/3人の高齢者が1人の若者を支える/ゆるやかな大家族/有料会話/ソーシャル子育て/熟年結婚/墓友、墓ペット、墓シェア/古いものが残っている街/コムビニ/コモビリティ/チョッピングモール/寝るだけベッドタウンから寝たきりベッドタウンへ/地方好きな若者/商店街をシェア店街に/新・ご近所づきあい/銭湯を新築する時代