愛犬が大ピンチ!? 何度通院しても完治しない「犬の骨折」―その原因に迫る『獣医の手術は間違いだらけ』

暮らし

公開日:2016/12/21

『獣医の手術は間違いだらけ―犬の「自然治癒力」を活かす治療―』(岸上義弘/幻冬舎)

 つい先日、友人の飼っている犬が骨折をしたという話を聞いた。5歳のトイ・プードル。骨折をしたのは、これで3度目だった。その時は「ずいぶんヤンチャなワンちゃんなのね」と思っただけだったが、『獣医の手術は間違いだらけ―犬の「自然治癒力」を活かす治療―』(岸上義弘/幻冬舎)を読み、心配になってしまった。もしかして、治療法に問題があるのではないかと。

 本書は現在の獣医療界に対し、鋭いメスを入れた一冊である。何度通院しても完治しない、骨折、脱臼、椎間板ヘルニアといった愛犬の病気は、もしかしたら「間違った治療法」を受けているために、治らないのかもしれない。

 著者は日本獣医再生医療学会会長の岸上義弘氏。ペットへの幹細胞移植の第一人者と称される獣医だ。岸上氏は犬の「自然治癒力」や「細胞移植」による治療を推進し、「時代遅れ」の治療法に危惧を抱いている。

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 現状、獣医系大学では30年前の治療法を正しいと教え続けており、ヒト医療ではずいぶん昔から廃れてしまっている方法を、依然として行っている獣医もいるそうだ。また、現在の医療常識では不要だと判断できる手術が、当たり前のように行われているという。

 例えば、骨折において処置される「プレート手術」。骨折箇所を手術で大きく開き、金属のプレートを直接折れた骨に当ててネジで留めるというもの。このプレート手術は、獣医系大学で「正しい術式」として指導されており、今なお多くの獣医が実践している治療法だ。

 しかし、プレートを装着することで骨は癒合しにくくなり、しかも細く弱くなってしまう。よって、一度は治ったように見えても、何度も骨折してしまったり、歩行障害になったりする。プレート治療による副作用で苦しむ犬を、著者は何百匹と見てきたそうだ。

 岸上氏が骨折の治療で推奨しているのは、「犬の自然治癒力」に注目すること。「骨折に対してよほどの例外を除いて、基本的にプレート装着の手術は行わない」ことを目指している。骨が自然に治ろうとする自然治癒力を「補佐する」治療法の方が、犬にとっても負担が少ないのだとか。

 本書では、「プレート治療」副作用の実態と、その代わりに行う治療法についての説明が専門的になされている。もし、あなたの家の愛犬が骨折を繰り返し、その度にプレートでの治療を行っているようなら、本書を一読する価値はあるだろう。

 我が家でも犬を飼っている。4歳のチワワだ。飼い始める前、ネットや書籍でチワワの飼い方について調べたものだが、その際、「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)に気を付けるように」と書かれていたことが多かった。膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿の部分の骨が、本来あるべき場所から外れてしまうという疾患だ。チワワをはじめとする小型犬に多いとされている。

 膝蓋骨脱臼に関しても、最適とは言えない治療をされてしまうケースがあり得る。なぜなら、膝蓋骨脱臼は手術をするのか、様子を見るのか、治療方針を決めるのが難しい病気だからだ。触診やレントゲン、生まれてから今までの様子などから、総合的に判断する必要があるそう。なので「犬に触らず、レントゲン写真を見ただけで『手術です』と言う獣医に任せることは、絶対にしないでください」とのこと。

 だがもし、我が家のチワワの様子がおかしく、かかりつけの獣医に連れて行き、「手術しましょう」と言われたとする。本書を読んでいなかったら、疑いもせずに従ってしまっただろう。「獣医さんがそう言うなら、間違いない」とほとんどの飼い主が思うのではないだろうか。

 獣医の言葉をうのみにせず、自分でも調べてみること。セカンドオピニオンを聞いてみること。そういった選択肢も、飼い主は持っておくべきだと実感した。

 ペットブームの陰には、旧態然とした獣医療界と、不要な投薬と手術がいまだに続く現状が存在する。本書は「再生医療」「自然治癒能力」を第一の治療と考え、また、万が一愛犬が大きな病気やケガに見舞われた時に、獣医任せの危険な治療を受けることがないよう、飼い主の知識を深めるために適した一冊である。

文=雨野裾