朝井リョウを輩出した小説すばる新人賞、第29回受賞作は“現役高校生”の描く青春群像劇

文芸・カルチャー

2017/2/9


『星に願いを、そして手を。』(青羽悠/集英社)

 2009年、デビュー作『桐島、部活やめるってよ』とともに作家・朝井リョウを輩出した小説すばる新人賞。直木賞作家の村山由佳や荻原浩、1月28日より川栄李奈ら主演で実写ドラマ化する『感情8号線』の畑野智美など、受賞者に注目の集まるエンターテインメント新人賞だ。2016年の大賞受賞者は、なんと史上最年少の高校2年生・青羽悠。初の著書となる『星に願いを、そして手を。』(集英社)が2月24日に発売される。

 宇宙が大好きだった中高時代、プラネタリウムの併設された町の科学館にいつも集っていた祐人、春樹、薫、そして理奈。いつしか疎遠になっていた彼らが、10年近い時を経て、お世話になった館長の葬式で久しぶりに顔をあわせるところから物語は始まる。早々に夢をあきらめた祐人や、夢をつかむ熱意を失いかけている理奈。元恋人同士のふたりの微妙な関係を描きながら、閉鎖目前の科学館を舞台に、4人は館長の遺した謎の答えを追う。

「ユーモアは幸せな時に生まれないって言葉がある」
「じゃあお前は年がら年中不幸せだ」

 随所で描かれる幼なじみたちの軽口にくすりとさせられながら、本書は語り手を次々変えて展開していく。幼なじみの4人だけでなく、かつての自分たちを重ね合わせるような現役高校生で館長の孫・直樹や、その同級生で周囲から浮いている変り者の・河村さんなど、世代を超えた思いが交錯していく。

「書き手の想いがとめどなくあふれ過ぎたために、小説の完成度から言えば欠点だらけなのだが、自分はどうしてもこれを語りたいのだという熱量で他を押しのけ圧倒していた」と選考委員・村山由佳が評したとおり、全体的に拙さも見受けられる。だが、ちりばめられた言葉には著者の想いが熱くこめられており、前述の軽口をふくめ、ついつい目を止めてしまう文章が満載だ。

「『三人寄れば文殊の知恵』なんだから、四人もいれば最強だ」とかつて語り合った仲間同士。
「人生いつも劇的だ。計算ミス一つでさえ劇的に人生を変えてしまうこともある」と些細なミスも許さなかった館長の言葉。

 誰しもが、知らず知らずのうちに何かを選び、何かを諦めていたとしても、それでも自分の道を信じたいというまっすぐな想い。

 そのひとつひとつが強烈に響くのは、決して著者が高校生だからではない。世界をまっすぐ、奥まで見定めようとする姿勢が著者自身にあるからだ。信じたい。夢を追いかけたい。どんな道を歩んだとしても、自分なりの“何か”をつかみたい。その切実さには、大人も子供も関係なく胸を打たれるはずである。

 何者かになりたくて、満たされない欲にまみれながら、“書く”ことをつかみとったと語る著者。16歳の彼が今後、どのような変貌を遂げていくのか期待するとともに、まずはこのデビュー作を手にとっていただきたい。

文=立花もも