365日やっぱり困った時は神頼み!温泉、子育て…これからご利益のある神様とは?

生活

公開日:2017/1/30


『日本の神様と楽しく生きる 日々ご利益とともに』(平藤喜久子/東邦出版)

 一年のはじまり、初詣やふるさとの行事を通して、神様に祈りをささげた人も多いだろう。普段の生活ではあまり意識しない“神様”の存在も、年初には商売繁盛、健康長寿、家内安全など、神頼みする時に意識する人は多いはずだ。一年の幸福を願いながら神聖な気持ちで手を合わせることは、新年のおごそかな儀式である。

 私たち日本人の暮らしの中で、何気なく行ってきた風習は、たくさんの“神様”と結びついている。『日本の神様と楽しく生きる 日々ご利益とともに』(平藤喜久子/東邦出版)は、かわいい神様のイラストつきで、エピソードなどがわかりやすく解説されており、子供から大人まで楽しめる新年にふさわしい一冊だ。新しい年を運んでくる「年神様」をはじめ、「太陽の神様」「子育ての神様」など、様々な“○○の神様”の名前とその由来(=神話)が現代の言葉で読みやすく、ドラマチックに描かれている。

「八百万(やおよろず)の神」という言葉があるように、古来、日本人は身の回りのあらゆるものに神様を感じていた。地震や台風をはじめ、たびたび起こる自然災害や、各地で起こる反乱など様々な試練に逢いながら、人々は多くの祈りをささげてきた。「神々の宿る国」といわれるほど、日本は神話の中にもたくさんの神々が登場し、各地の神社や伝統行事を通して日本人の心のよりどころとなってきたのだ。

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 時代は変わっても、受験の時は学問の神様、厄年には厄除けの神様というように、人生の節目には神様に助けを願わずにはいられない。やっぱり困った時は神頼みしてしまう私たち。どうしたら“ご利益”にあずかれるのか…というのが最も気になるところだ。著者は「四季折々のイベントを神様たちと楽しむ。それがご利益に通じる」と述べている。では、どんな神様がいるのか、季節ごとのイベントやエピソードとともに、いくつか紹介しよう。

冬「清めの神様」
身を清めるために禊をした時に生まれた神様。大晦日、たまった日常の罪やけがれを一年分デトックス!

早春「温泉の神様」
医学や健康にまつわる湯治の知恵も授けてくれた2人。日本が温泉大国になったのはこの神様たちのおかげ。温泉神社にお詣りしよう。

春、「山の神様」
荒々しい山男が信仰してきたのは、女性の入山を嫌がる嫉妬深い女神。でもいざという時は頼りになるので、山の自然を慈しみ、感謝の気持ちを忘れずに。

初夏「子育ての神様」
夫を早く亡くし、働きながら子供を育てた元祖ワーキングマザー。こどもの日に我が子を守る教えを授けてくれる。

盛夏「そうめんの神様」
スレンダーな夜更けの恋人と言われた神様。夏バテ対策にはパワーフードのそうめんを。細い麺には生命力あふれる神の霊威が宿る。

秋「月の神様」
神様の姉弟げんかで「昼」と「夜」が生まれたと言われる。月には不死の薬があるとか…十五夜は夜の貴公子に若返りを祈願しよう。

 どの神様も素性を知ると、それぞれに個性豊かでチャーミング。ケンカしたり、嫉妬したり、とても人間的で親近感をおぼえる愛すべきキャラクターたちなのだ。
この他、「裁縫の神様」、「富士山の神様」、「トイレの神様」など、大自然から生活用品に至るまで神様と結びついていることに驚き、「スポーツの神様」「貧乏の神様」「怠け者を懲らしめる神様」などユニークな神様はどこか微笑ましい。

 この神々からは、古代と現代をつなぐロマンを感じ、謙虚に生きてきた日本人の文化や歴史を堪能できる。今年一年、縁起よく暮らしたい人は、繰り返されてきた何気ない風習を通して神様を身近に感じ、大切に思うことで、思いがけないご利益があるかもしれない。やさしく語りかけてくれるようなこの本が、忘れかけた日本の心をそっと教えてくれるだろう。

文=藤本雪奈