空想が現実へ!! ロボットへの偏愛に溢れる著者が送る、ロボットの歴史!!

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2017/2/14


『ロボットの歴史を作ったロボット100』(アナ・マトロニック:著、片山 美佳子:訳/日経ナショナルジオグラフィック社)

 ロボットを定義するのは、案外と難しい。「ロボット」の語源は、カレル・チャペックが書いた戯曲『R.U.R.(ロッサム・ユニバーサル・ロボット社)』に登場する人造人間で、金属製の機械ではなく化学合成によって作られた、人間とは異なる組成の生命体なのだ。だからなのか、この『ロボットの歴史を作ったロボット100』(アナ・マトロニック:著、片山 美佳子:訳/日経ナショナルジオグラフィック社)には、空想作品からは『2001年宇宙の旅』の「HAL(ハル)9000」を、現実世界からは無人航空機のドローンなどまで取り上げている。

 いささか無節操な本書であるが、著者のロボット愛が溢れているのは間違いない。片側のページにイラストや写真があり、その反対側に解説と個人的な感想が書かれているのに交じって、さらに「DATA BYTE」として一言コメントを添えているかと思えば、コラムのページもある。このことについて著者は、はじめのページで「リストに入りきらないロボットを紹介したりしている」と述べている。

 そんな著者が選んだ現実世界のロボットの章では、1928年にイングランドで誕生した「エリック」がエポックメイキングだと思われる。当時すでにロボットという言葉は英語として定着しており、ロンドンで開催される展覧会において当初予定されていた王族のスピーチが見送られてしまい、キャプテン・ウィリアム・H・リチャーズが観客をあっといわせる必要に迫られて作ったアルミ製の鎧の人形だそうだ。電気モーターや電磁石を内蔵したエリックは、座席から立ち上がってお辞儀をし、手を振るなどして大評判となり、その胸には『R.U.R.』に敬意を表して「RUR」の文字が入れられていたという。この、「実在する創造物として世界で初めてロボットと呼ばれた」エリックについて著者は、「いつまでも歴史に残るだろうと記している。

 著者が云う、現実世界での「ロボット時代の夜明けを告げる最初の威光」がエリックだとすれば、人間の仕事を奪いかねない産業用ロボットの始まりは、1961年にジョージ・デボルによって開発されたロボットアーム「ユニメート」だそうだ。ジョージはバーコードの考案者でもあり、ユニメートにはドラム記憶装置に2000種類の動きを設定できたという。見世物としてのロボットと働き手となるロボットの登場は、やがて人々を癒す犬型ロボットの「AIBO」や家庭用ロボット掃除機「ルンバ」などの誕生へとつながっていった。そして、それらを制御する人工知能の研究も進み、「BINA(ビーナ)48」と呼ばれるアンドロイドはソーシャルメディア上の個人データや日記などを組み合わせて、特定の人間のアバターを作ることを目的にしているとのこと。このプロジェクトに携わっているマーティン・ロスブラットは妻のビーナにプロトタイプとなることを頼み、本物のビーナがBINA48にインタビューをすると、まだ本物のビーナの内面を再現できていないこと、本物になることを期待されていることについて、「大きなストレスを感じるもの。ひどい無力感に襲われるわ」と自分の気持ちを答えているというから驚きだ。

 著者は社会学者ジャン・ボードリヤールの言葉を引用し、その中には「奴隷制には反乱がつきものだ」というものがあった。ロボットが人間に反乱を起こすというテーマは、人ならざるモノへの畏怖だけではなく、奴隷制度という歴史的な背景もあるのかもしれない。しかし、著者は「まだ私は希望を抱いている」と明言している。何故ならば、「もしすべての人間がそれを恐れるなら、人間は子を持つことはできない」からだと。ロボットに愛情を注ぐことが、とても重要だということか。

文=清水銀嶺