社会

子どもの貧困率は全国の約2倍。島のコミュニティから逃げられない、沖縄に蔓延する「暴力」の正体とは?【前編】

 沖縄、と聞いてまず思い浮かぶのはなんだろう。青い海にのんびりとした人たちのいる癒やしの島、といったところだろうか。一方で沖縄は、相対的貧困率・子どもの貧困率ともに全国1位と、多くの社会的問題をはらんだ地域でもある。『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(上間陽子/太田出版)には、一般的な沖縄のイメージとは異なる一面が描かれている。

 著者の上間陽子氏は沖縄生まれで、今は県内の大学で教鞭をとっている。非行少年少女の問題を研究している上間氏は、2012年から16年にかけて沖縄の女性に聞き取り調査をし、時には支援や介入を行ってきた。この本はこれまで上間氏が出会ってきた少女たちの記録である。彼女たちを取り巻く現状について上間氏からコメントをもらった。

 まず上間氏が指摘するのは、沖縄の非行少年少女のコミュニティの多くが、「貧困の影響を強く受けていて、育ちのなかで暴力を受けて育たなかった子どもはひとりとしておらず、みな『家庭崩壊』していること」という点だ。これは、沖縄少年院が2013年度に仮退院した46人の成育環境を調査分析した結果でも明らかになっている。

「もしも出所後に、彼らが働けるしっかりした職場があり、家庭がそれを十分にサポートできれば事態は変わるでしょう。ただ、そのようにはなっていない」つまりは、非行少年たちのコミュニティは、変わらず居場所になってしまうという。

「男性同士のポジショニングのために、年下の女性の情報をやりとりしています。自分は誰とセックスをしたか、性病にかかっている子は誰か、どの風俗店に誰が働いているのか、といった情報が男性の間でやりとりされるのです」(上間氏)

 沖縄の女性の問題は、少年たちがさらされてきた貧困や暴力の連鎖の先にあると言っていいだろう。子どもの非行や貧困は他の地方でも起こっていることだが、沖縄の非行少年少女にはある特徴がある。それは、「彼らのコミュニティには外部がないこと、コミュニティ内部の暴力、そして濃密さ」だと上間氏は言う。

 同書には優歌というシングルマザーが登場するが、彼女は兄や恋人に暴力を振るわれ、たったひとりで子どもを産むことになっても地元から離れない。他の女性たちも耐え難い暴力が身に降り掛かっても、沖縄に住み続ける。「暴力が辛いなら、そこから出ればいいじゃないか」と読者は思うかもしれない。でも、未成年のうちから閉ざされた環境しか知らず、そこから脱する術を教えてくれる大人がいない場所に育った子に対して、どこまで「自己責任」だと言えるだろうか。

 家族が何度も変わり15歳から売春を始めた女性、10代で子どもを産みキャバクラで生活費を稼ぐ女性、中学生の時に集団レイプされた女性…同書に登場するのは幼いうちから貧困や暴力にさらされてきた人たちだ。この本は数少ない選択肢の中で生きてきた少女たちの物語でもある。

【後編】「遠い島のかわいそうな女性たち」でいいのか? 問題の根本にある米軍基地の存在…負の連鎖”沖縄内部の暴力”から彼女たちを救うには?

文=松原麻依(清談社)



TOPICS

最新記事

もっと読む

人気記事ランキング

ダ・ヴィンチ×トレインチャンネル

特集

ダ・ヴィンチニュースの最新情報をチェック!

ページの先頭へ