現場はまさに『バクマン。』 マンガ共同制作の大事な話。

マンガ・アニメ

2017/3/3

 以前から原作・作画担当の分かれたマンガは多く存在し、ヒット作も生み出されてきた。

 こういったマンガは、重厚な世界観やストーリーの構築という良さが特徴だが、実際のところ、複数の作家による作品制作は苦労も多いのではないだろうか。

 月刊コミックジーンで少女が主人公の輪廻武装アクション『NIRVANA-ニルヴァーナ-』を連載している、じん×沙雪の異色のユニット・ZOWLS(ゾウルズ)に話を聞いた。

 
――『NIRVANA-ニルヴァーナ-』というマンガでのお2人の役割分担を簡単に教えてください。

じんおっと・・・難しいですね(笑)。

沙雪:開幕ちょっと説明が難しいところからきましたね(笑)。

じんわかりやすく言うと、まず各話の大筋を2人で決めて、それを僕がプロットに落とし込むんですよね。

沙雪:それを私がネームに起こして、そのネームを見ながら2人で協議をし、最終的に作画に入るという感じです。

――なるほど。どちか一方が原作、一方が作画というわけではないんですね。

じん話の部分は2人で考え、絵の部分は沙雪さんに引っ張っていただいている印象です。

――じんさんは「カゲロウプロジェクト」をはじめとした音楽・小説などのマルチクリエイター、沙雪さんはアクションに定評のある漫画家として活躍されていて、漫画作者としては異色のユニットですよね。ZOWLSの成り立ちを教えていただけますか。

沙雪:私たちの出会いは、それこそダ・ヴィンチニュースさんの対談企画の時なんですよ。

じん外道の1巻(※)発売の時ですよね。僕が以前から沙雪さんのファンだったということもあって、対談インタビューを企画していただきまして。

沙雪:その際に連絡先を交換して、そこからお互いの趣味の話とかをするようになったんですよね。

じんそんな中で沙雪さんが「一緒になにかやらないか」という話をしてくれたんですよ。それがとても嬉しくて、僕からも「だったら、バトルヒロイン作品をやらないか」っていう提案をしたんです。

――当初からバトルヒロイン作品を考えられていたんですね。

沙雪:当時私もバトルヒロイン作品をやってみたかったんですけど、女性主人公のバトル漫画ってなかなか出版社さんにも受け入れてもらえなかったんですよね。

じんそれを聞いて僕も俄然やる気になりまして、温めていた『NIRVANA-ニルヴァーナ-』の原型みたいな話を沙雪さんに話したら、気に入ってもらえたみたいで。

沙雪:それからは毎日のように『NIRVANA-ニルヴァーナ-』の話をし続けて、現在に至るという感じです。

(※)『月下ノ外レ外道』(著:沙雪)。ジーンピクシブで連載された作品で、コミックス4巻まで発売中。

――ストーリーはどのように打ち合わせされていますか。

じん連載が始まってからというもの、ほぼ毎日のように電話でストーリー会議をしていますね。

沙雪:それこそ、朝までなんていうのもざらです。2人でアイディアを出し合うって感じで。

じん一度決まったストーリーを0から作り直すみたいなこともあるんですが、それも含めて、今の作り方が自分たちには合ってるんじゃないかと思っています。

――作画は沙雪さんがご担当とのことですが、キャラクターデザインやネームのコマ割りなど、ビジュアル的な面はじんさんもアイデアを出されているのですか?

沙雪:基本的には好きにさせていただいているんですが、じんさんのアイディアで構図やデザインを良くしていただいたこともよくあるんですよね。

じん沙雪さんの絵に対しては、僕もファンの目線というか「もっとこういう沙雪さんが見たい」というような視点で、色々リクエストしてしまうんですよ。
迂闊なことを言うと作品の良さを削いでしまうということもあるので、絵に対してもいつも真剣に向き合っています。

――沙雪さんはおひとりで原作・作画を手掛けたオリジナル作品も連載されていましたが、
そういった作品と『NIRVANA-ニルヴァーナ-』では、共同制作という点で戸惑ったことやよかったことはありますか。

沙雪:戸惑ったことといえば連載当初、やりとりやリテイクの仕方が難しかったことですね。ですが、私ひとりでは決して表現できなかった作品になっていると実感できているのがよかったことです。

――2人組のマンガ制作、というと『バクマン。』を思い浮かべる人も多いと思います。実際に作品を作ってみて似ていると感じたところや、「マンガとは違うな」と思ったことがありましたら教えてください。

じん言われてすごく驚いたんですが『バクマン。』と似たような状態になってるな…って思うこと、多いんですよ。お互い徹夜が続いたり、沙雪さんが作画の締め切りに苦しんでいたりする時の切迫感は、まさにアレだと思います。

――通じる部分は多くあるのですね。打ち合わせをされるなかで、「ここはイメージの共有に時間がかかるな」といったところはありますか?

じんやっぱり最初の頃ですかね。お互いのイメージを沙雪さんに描いていただくにあたって、キャラや世界観の共有には、特に時間がかかりました。

異国情緒溢れる独特な世界観には、2人分のこだわりが詰まっている。

――では作品に関して意見がぶつかったとき、どのように解決されていますか?

沙雪:意見に関しては2人の意見のいいとこ取りをしている感覚があって、ぶつかるということはあんまりないですね。

じんお互いの譲れないところを、伸ばすような作り方になってますよね。

沙雪:基本的にぶつからないですねぇ。

――逆に打ち合わせをされていて、ノってくるのはどんなときですか?

沙雪:2人同時に良いアイディアが思いついた瞬間とかですかね。

じんそういう時って、次から次に面白い案が出てくるんですよね。一番楽しい瞬間かもしれません。

沙雪:あとは締め切り的に限界が近い時ですかね…。

じん締め切りがやばいと謎にアイディアが降りてくるんですよね…。

――編集者と意見が合わないときもあるかと思いますが、そのときはどのように戦っていますか?

じんそういう時は、ひたすらにこちらの意見を熱弁しますね。「このキャラはこうじゃなきゃダメなんです!」みたいな感じで(笑)。

沙雪:意見が通るか通らないかは別として、必死になりますね(笑)。

じんなんなら主人公の人格から色々揉めましたよね…。

沙雪:そうですね…。

――そうなんですか?確かに『NIRVANA-ニルヴァーナ-』の主人公・八千夜は「人助け」を信条としていて、執着しているともいえます。ちょっと変わったキャラクターですよね。

沙雪:先ほども触れたのですが、かねてから「女の子でもバトル漫画ができるんじゃないか?」という思いがありました。しかし、なかなか実現できなかったんですよね。

じん確かに、バトル漫画=少年主人公という印象は僕らにもあるんですよ。だからこそ、打ち破りたいという思いで作ったと言いますか…。

沙雪:逆に「少女主人公でしかできないバトルというものはなにか?」と考えた時に、本作でもメインのテーマとなる「受け入れる」というスタンスを思いついきました。

じん女性ならではの強さというか、たとえば母性みたいな「許す強さ」を持った主人公像が浮かんで、そこから仲間の痛みや悩みを受け入れるという意味で「合体武装」のアイディアが出てきて。

沙雪:主人公の「八千夜」という人格と「人助け」っていうテーマも、それに紐づいて生まれたという感じです。

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少女と仲間の合体武装による迫力のバトルは必見。

――今回コミックスを1・2巻同時発売で出されましたが、2巻の後半で一気に読者を主人公に引き付けるような構成だったと思います。
このような構成も当初からお2人で練られていたのでしょうか?

じんそうですね。2巻の後半のストーリーは特に連載開始前から一番やりたかった部分で「まずはここまで読んでいただきたい!」という気持ちがありました。
だからこそ1・2巻同時発売をお願いしたというのもありまして。

沙雪:もちろん、実際に作り始めるとところどころ上手くいかない部分もあったんですが、2巻のラストは絶対にブレちゃいけないという思いが強かったので、一番良い形を摸索しました。

じん逆に1巻はプロローグという感覚があるんですよね。2巻まで読んでいただいて初めて『NIRVANA-ニルヴァーナ-』という作品の本質が伝わるんじゃないかなと思います。

――確かに2巻の後半はすごい盛り上がりでした。少し話は戻りますが、漫画誌各誌で原作者のための新人賞が設けられるなど、ZOWLSのように複数の作家さんの共同制作による作品は今後も広がっていく傾向にあると思います。作品を作る上でのよい関係とはどんな関係でしょう?

沙雪:やはりリスペクトし合える関係であり続けるということでしょうか。
それによって私も「この人に見合う作品を作らなくてはいけない」という良い意味でのプレッシャーを感じながら、作ることができるんですよね。

じんホントそうですよね。僕も相方にはできないことを自分が誰よりもできなくちゃいけないと思いながら、制作している節はあります。

――お2人の信頼関係はとても深く感じられました。良い関係を保つ秘訣を教えてください。

じんまず僕らの場合は、好きな作品の趣味がめちゃくちゃ似ているっていうのがあると思うんですよ。
なので、自然と作品作りに対しても意見が合う瞬間が多いんですよね。

沙雪:あとは沢山喋るということでしょうか。

じん僕らもそうやって今の作り方に辿り着いたって感じですもんね。

――相手へのリスペクトや好きな作品への愛が、良いコミュニケーションを生んでいるのですね。ありがとうございました。

 

⇒ダ・ヴィンチニュース じん・沙雪 特別対談(前編)

 

『NIRVANA-ニルヴァーナ-』


原作:じん×沙雪(ZOWLS)
漫画:沙雪

現代のナイチンゲールと呼ばれる少女・春秋八千夜は飛行機事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこは見たことのない世界。希望の神”サクヤ”の生まれ変わりだと八千夜や言われるが――。
転生した少女は、十二の仲間と共に『希望』を見出す旅に出る。
救世の輪廻武装アクション!! (c)EDWORD RECORDS / 1st PLACE
第1話を試し読みする

じん
作詞・作曲家、小説家、マルチクリエイターとして活動。2011年より動画投稿を始め、歌詞のストーリーがリンクした楽曲群「カゲロウプロジェクト」の関連動画は1億再生を超える爆発的ヒットに。2012年5月にCDデビュー、2ndアルバム「メカクシティレコーズ」はオリコン初登場1位を獲得。2014年には自身原作のアニメ「メカクシティアクターズ」が放送される。自身執筆の小説、漫画「カゲロウデイズ」シリーズは累計850万部を突破する等、様々なメディアで活躍中。
twitter:@jin_jin_suruyo 公式サイト:http://1stplace.co.jp/artist/jin/

●沙雪(さゆき)
漫画家。九州在住。第6回MFコミック大賞にて大賞を受賞。月刊コミックジーンにて『ダブルゲージ』(全6巻)、ジーンピクシブにて『月下ノ外レ外道』(全4巻)などを連載。生き生きとしたキャラクターに躍動感のあるアクション、世界観を表現する高い画力が評価されている。
twitter:@ggsayuki ブログ:沙礫@蕎麦屋