現役ベテランCAに聞いた “ANAの気づかい” ANA社員はお客様の何を見ているのか?【前編】

業界・企業

2017/3/27

『人もチームもすぐ動くANAの教え方』(ANAビジネスソリューション/KADOKAWA)

 『どんな問題も「チーム」で解決する ANAの口ぐせ』、『仕事も人間関係もうまくいくANAの気づかい』、そしてこのたび発売されたシリーズ第三弾の『人もチームもすぐ動くANAの教え方』(いずれもKADOKAWA)をはじめ、ANAグループのノウハウ本が軒並み売れている。マナーや接客の基本はマニュアル化できても、相手を観察し、想像して、臨機応変に必要な対応を行う“気づかい”は個人の裁量に任されることが多い。接客だけでなく、チームで同じ目的を完遂するビジネスシーンでもその“気づかい”を受け継いできた、一歩先をいくANAの経営姿勢に対する共感の声も多い。ANAの社員はどのようにその“気づかい”を身につけ実践してきたのか? ベテランCAに話を聞いた。

――ANAでは新入社員時代、マナーや接客の研修を受ける際に、“気づかい”についても学ぶ機会があるのでしょうか。

阿南千冬さん(以下、阿南): 気づかいの大切さは教えていただきましたが、具体的にどのようにすればいいのかというのは経験してみないとなかなかわからないのです。ですから現場で先輩方がお客様に対応している姿を見て学んだことが多いです。

 ただすべてを見て学べるわけではないので、わからないことはどんどん質問しました。またANAのCAはフライトの前後で必ずクルーと“ブリーフィング”という打ち合わせや振り返りのためのミーティングをしており、フライト前にその日の目標を決め、フライトが終わると達成できたかどうか確認し、お客様にしてさしあげたことでどんな反応があったか報告し合います。そこでさまざまな事例を共有することができるので、他のクルーの経験から学ぶことも多いですね。お薬を飲むためのお水が必要なお客様には、お白湯をお持ちするとか、お弁当を召し上がっているお客様にはおしぼりをお持ちすると良いとか、そういう気づきがたくさんありました。他のクルーの体験を自分でも実践して、経験を積んできました。

――お客様のニーズはさまざまですから、臨機応変に自分で考え対処しなければならない場面も多いと思います。そのとき心がけていたことはありますか。

阿南 先輩方からは、お客様がここにいらっしゃるまでにどのようなストーリーをお持ちなのか想像して、きっとこういう状況なのかもしれない、ではこういうサービスをしてさしあげたらどうだろうと考えて、勇気を持って行動しましょうと教えられてきました。

 ですからまず、お客様をよく観察すること、そのうえで想像力を働かせることが大切だということを、自分自身にも後輩たちにも言い聞かせてきました。

 ただ言うは易く行うは難しで、自分が勝手に想像したことが、お客様のご要望とはまったく違ったということもあります。先ほどのお水のケースで言いますと、こちらがお薬用だと思い込んでお白湯をお持ちしたら、本当は喉が渇いて冷たいお水が飲みたかった、ということもあります。

 ですので、お客様のサインを見逃さず、表情や持ち物、会話のご様子などからできるだけ状況を理解する努力をしています。お仕事でお疲れなのかもしれない、楽しいご旅行中かもしれない、お子さまのご結婚で海外に行かれるのかもしれないと、情報をできるだけキャッチして、こちらでできることはなるべくしてさしあげようという風土がANA全体にあると思います。

 これから食事をはじめようとしている方におしぼりをお持ちしたり、飲み物をお持ちしたり、小さな気づかいはいろいろあります。そういうことはマニュアルに書いてあるわけではありません。仮にマニュアル化してしまうと、書いてある通りにしなければならないと杓子定規に考えてしまって臨機応変な対応ができなくなります。やはりひとり一人のお客様のニーズにお応えするのが気づかいなので、それは自分で実践しながら学んでいくしかないと思います。

――経験を積むなかで失敗もすると思いますが、忘れられない失敗はありますか。

阿南 もちろんいろいろあります(笑)。眠っていらっしゃる方に寒くならないように毛布をかけてさしあげたら、暑いんだよって怒られたこともありました。新入社員時代は、手荷物を座席の上の棚に入れていただくとき、そのことだけに必死になって「お荷物を上に入れてください」とストレートにお願いして、お客様にムッとされてしまったこともあります。

 先輩方は、「差し支えなければ、お荷物を上の棚にお入れしてもよろしいでしょうか?」ですとか、「まもなく離陸しますので、恐れ入りますが手荷物を前の座席の下にお入れいただけますか?」ですとか、言葉をワンクッション入れたマジックフレーズと呼ばれる依頼形でお願いをしていて、そのように声かけすると協力してくださることが増えたんです。そういった先輩の声かけを積極的に真似して、成功体験を少しずつ増やしてきました。

――すぐに協力してくれないお客様にはどのような対応をされているのでしょうか。

阿南 できるだけお客様に不快な思いをさせないことは大切なのですが、安全に関わることについてはどうしても理解、協力していただかないといけないこともあります。そこはきちんと説明してお願いするようにしています。なかにはご立腹になるお客様もいらっしゃいます。その場合は他のクルーと共有して、解決に結びつける努力をしています。

 どんなお客様に対しても心がけているのは、仕事として割り切って接するのではなく、気持ちや心を込めてお声がけすることです。その心がけひとつで全然違った対応になりますし、お客様にもより理解いただけるようになると思うのです。

【後編】職種を超えた社内交流で育む仲間意識が、ANAの世界最高評価を受けた“サービス品質”につながっていく!
ANAの社員さんたちは普段どんな本を読んでいるのかも聞いてみました。後編は3月27日(月)11:00公開です。

取材・文=樺山美夏 写真=岡村大輔