思わず子どもに向けて振り上げた手、どうする? 幼少期に虐待を経験した女性の育児奮闘記

出産・子育て

2017/4/3

『ワタシはぜったい虐待しませんからね! ― 子どもを産んだ今だから宣誓!』(主婦の友社)

 どんなにあやしても泣き止まない。イヤイヤ期の反抗的な態度。子育ては楽しいばかりではありません。つらい思いもセットなのです。自分に余裕がなくて、イヤイヤされたとき、思わず手が出そうになった、という人は多いでしょう。ましてや、自分も虐待された経験があるのなら。

 虐待は連鎖する。子育てにおいてこんな悲しい言葉を聞くことがあります。自分がされてきたことを、子どもにも無意識のうちに行ってしまう。そんな連鎖はどうにかして絶ちたいものです。でもどうやって…?

 子育てにおいて、怒りや理不尽な思いは、ポジティブに変換することができるのです。そのことを身をもって証明してくれたのが、マンガ家のあらいぴろよさん。このたび『ワタシはぜったい虐待しませんからね! ― 子どもを産んだ今だから宣誓!』(主婦の友社)にその壮絶な日々を記録しました。

■振り上げた手をどうする?

 例えばものすごく手の込んだ離乳食を、食べもせずこぼされたとき。だれでもこんなことを思うはず。

この離乳食をつくるのにどれだけの手間がかかったか…
それを食べないなんてどういうつもりなの?…
せっかく作ってやってやったのに



 あらいさんは、このとき、自分が手を上げたことを自覚したそうです。それで正気に戻ったため、自分をビンタするだけで済みました。けれども今後も同じことがおこらないとは限らない…。ではどうするか?


 思わず上げた手は、愛の「投げキッス」に変換するという、荒技に出たのだ。それ以降、イライラしたら、掃除機なみの吸引力でキスをくり返したそうです。すると…。
 スキンシップにより、愛情ホルモンがでるという効果なのか、息子さんがそれまで以上に、かわいく見えたそうです。

■歯ブラシを一緒にやっつけよう!

 また子どもが歯みがきを嫌がるとき。なかなかマニュアルどおりにいかないのが子育てなのです。歯ブラシを嫌がる子どもをどうする? そこで、あらいさんが編み出したのは、歯ブラシの「スケープゴート大作戦!」


 歯ブラシが勝手に暴れて、息子の口の中に入ろうとする、という設定を創作。なかなか演技力がいる設定ですが、効果は抜群。ふたりで、歯ブラシを「成敗」するという絆が生まれうえに、息子さんは歯ブラシの感触に慣れていったのだそう。

 自分のなかで、「子どもをたたきたい」。そんな思いが出たときに、ひと呼吸置ける力。これがあらいさんを虐待から防いだことはもちろん、発想を切り替える切っ掛けにもなりました。

 けれどももちろんこれは、あらいさんなりに苦闘した結果です。完成したエッセイを見ると、さも簡単にこれらのアイディアを編みだしたかのように見えます。けれども悩み苦しんでいた日々は読者と一緒です。

 子どももゼロ歳。親としてもゼロ歳。息子さんと一緒に成長していく姿も描かれています。
 またこの本は、単なる体験記にだけには留まりません。なぜ子どもの泣き声を聞くと体がフリーズしてしまうのか。その理由を科学的に説明したり。章末ごとに、子育てのお悩みQ&Aも設けられており、育児の知識も得られる一冊になっています。

 この本のテーマは「虐待の連鎖を絶つ」という重いものに聞こえます。けれども子育てにおいてイライラすることは誰にでも起こりえます。それをどう乗り越えますか? そのヒントがこの本にはたくさん詰まっています。
 プレママはもちろんのこと、子どもが学齢期になったお母さんにも子どもと上手に接する手がかりになりそうです。

文=武藤徉子