「私、まなちゃんのネットストーカーなんです」/はあちゅう×紗倉まな対談【前編】

エンタメ

2017/4/7


 大学生時代に始めたブログで注目を集め、広告代理店勤務を経て、現在は作家として活躍しているはあちゅうさん。恋愛や仕事術、ライフスタイルなど幅広いジャンルの書籍を出版しており、この春には文芸誌『群像』にて「憧れだった」と語る小説を発表。2月17日に刊行されたエッセイ『言葉を使いこなして人生を変える』(大和書房)では、自らの「文章への想い」を一冊にまとめあげている。 

 そんなはあちゅうさんが「嫉妬する」という書き手が、3月18日に新作小説『凹凸(おうとつ)』(KADOKAWA)を発表した紗倉まなさんだ。『64-ロクヨン-』瀬々敬久監督による映画化が決定したデビュー小説『最低。』(同)を読んで、「打ちのめされた」という。同様に、高専生だった紗倉さんが「妬み半分」でチェックしていたのがはあちゅうさんのブログ。まさに相思相愛だ。

 それぞれ広告業界、AV女優というキャリアを起点に持ちながら、書くことを通じて道を切りひらき、互いの表現に惹かれ合った二人。運命の対談!

「ついDMを送っちゃいました」(はあちゅう)


はあちゅう:私、まなちゃんのすっごいファンで、インスタもTwitterもフォローしてるし、YouTubeもチェックしてるし、その他の媒体露出もかなり広範囲にチェックしているんです。いつか会えないかなって思っていたけど、そういう人とは仕事で会えるまで我慢するようにしているんですね。それなのに、ついこの間、我慢できずにDMを送っちゃいました(笑)。

紗倉まな(以下、紗倉):そんな風に思っていてくださったんですね!? DM本当に励みになりました……ありがとうございます。

はあちゅう:小説も読ませていただきました。まず前作の『最低。』がすごく良くて、去年読んだすべての本の中で、一番好きだったんです。新作の『凹凸(おうとつ)』も、ワクワクしながらページを開きました。まなちゃんの文章って詩的で、吸い込まれる感じがするんです。だから、今回は長編にもかかわらず、前作の短編と同じようにリズム良く読むことができました。それと同時に、前回以上に文学的な挑戦をされているなって感じて。「あなた」って呼びかけるような口語を使っているところとか、書き手としても刺激をもらいつつ、打ちのめされちゃいました。

紗倉:いやいや……(照)。

はあちゅう:私、まなちゃんのネットストーカーをしているので(笑)、読んでいて「これはご自身の体験かな?」って思う箇所もたくさんあって、二重の意味で面白かったですね。

紗倉:実際、自分の体験を投影させながら書いた部分もあったので、感情が溢れすぎてしまったんです。だから、書きすぎた文章をだいぶ削りました。文のダイエットです(笑)。

はあちゅう:削る作業が一番つらいですよね。私も「これは!」と思う文章を削るのがつらくって……。

紗倉:新刊の『言葉を使いこなして人生を変える』でも言及されてましたよね。一生懸命書いた作品を全部無しにして、書き直すって。はあちゅうさんにもそんなご経験があるんだと知って、すごく感動してしまいました。はあちゅうさんが『群像』で発表された3つの短編(「世界が終わる前に」「サンディエゴの38度線」「六本木のネバーランド」)は、実体験を反映されているんですか?

はあちゅう:そのまま実際にあったことではないんですけど、3編とも自分の体験がベースになっています。登場人物にもモデルがいます。

紗倉:読みながら、やっぱり経験は財産なんだなって思ったんです。はあちゅうさんは学生時代からいろんな国を訪れて、いろんな人と出会って、そこでいろんな感情を味わって。それらを小説の素材として活かすことは、はあちゅうさんにしかできないことですよね。まさに素材の宝庫です。

「AVネタじゃないと書いちゃいけないのか」(紗倉まな)


紗倉:『言葉を使いこなして人生を変える』を読んでいて「書かずにはいられない、書き手の宿命」みたいなものがあると感じました。はあちゅうさんの中に、それがいつ芽生え始めたのかが気になっていたんです。

はあちゅう:私も同じことを聞こうと思ってました(笑)。私の場合は、2歳の頃から「将来は本を書きたい」って言ってたらしいんです。でも、本格的に意思を持って「作家になりたい」と思うようになったのは、9歳の頃。林真理子さんのエッセイを読んだことがきっかけですね。

紗倉:9歳で林真理子さんのエッセイを読んでいたんですか!? 早熟(笑)! 私は9歳の頃、なんにも考えてなかったなぁ……。文章を書き始めたのもつい最近のことなんです。

はあちゅう:高橋がなりさんに書いたものを読んでもらっていたんですよね? そんな記事をどこかで読みました。『最低。』はどうやって書き始めたんですか?

紗倉:当時はいくつかコラムの連載を持たせて頂いていたんですけど、「自分はAV女優というネタを使わないと、ものを書いちゃいけないのかな……」という葛藤があったんです。でも、結局は自分の表現次第だし、余計なことは考えずに書いてみよう、と。そんな矢先にちょうど声をかけていただいて、まずはAV女優を題材にして小説を書くことにしたんです。

はあちゅう:そうだったんですね。どうして一作目でこんなに素晴らしいものが書けるんだろうって思いました。

紗倉:自分ではあまり自信がなくて。「なんとか生み出した我が子だけど、育て方は合ってたのかな?」って不安になったりします。だから、そんな言葉をいただけるのがありがたいです。はあちゅうさんは林真理子さんのエッセイから入って、すぐに小説が書きたいと思われたんですか?

はあちゅう:高校生の頃は文学賞にも応募していたので、やっぱり小さい頃から小説を書くことへの憧れはありました。ただ、同世代や年下の書き手の方々がどんどん本を出されたり賞をとられる中で「私は小説を書く力なんてないんだ」と思うようになって。今、幸運にも、一度あきらめたことに挑戦する機会をもらっていますが、書いているうちにだんだん何を誰にどうして伝えたいのかわからなくなっていって、書くのが本当につらいんです。エッセイは割りとスラスラ書けるんですけど、小説は「あぁ……もう書きたくない……」みたいな(笑)。ずっと逃げていた宿題と向き合っているような感覚ですね。でも小説を書かなきゃ次に進めない。いつまでも「こうなりたい」って像に自分がたどり着けない気がして。「書く人」としても成長できないって強く感じているんです。出来ることだけやっていると、成長が止まっちゃうから、小説は「下手だな」「力が足りないな」と自分で思いながらも、書きながら克服しなくちゃと思っています。それと、私はネットから出てきた人間なので、どうしても「ブログがたまたまヒットしただけの小娘なのに」って思われていて、それが悔しいっていう気持ちもあります。

対談後編に続く⇒//ddnavi.com/news/366152/

構成=五十嵐 大
写真=飯岡拓也