「見た目が9割」の現代社会でコンプレックスと付き合いながら生きる方法とは?

社会

2017/4/18

『顔ニモマケズ』(水野敬也/文響社)

 人は見た目じゃない! …なんていう人がいるけれど、本当だろうか。「カバーでその本の中身を判断するな(Don’t judge a book by its cover.)」つまりは、人や物事の価値を見た目で判断するなという意味の西洋のことわざもあるが、最近では、『人は見た目が100パーセント』や『人は見た目が9割』といった書籍が話題になり、見た目の美醜で生涯賃金にもかなりの差が出るという研究もあるそうだ。「もう少し小顔に…」「目をぱっちりさせたい…」当人にとっては重大なコンプレックスを化粧や髪型でカバーしようと試みるものの、やはり限界がある。美容整形という選択肢もあるが…。

顔ニモマケズ』(水野敬也/文響社)は、『夢をかなえるゾウ』の著者が過去に、自身の見た目が醜いと異常なほどに思い込んでしまう醜形恐怖に陥った経験から「見た目問題」に興味を抱き、9人の実在する人物にインタビューをした記録だ。

 生まれつきリンパ管に腫瘍ができ、手術を重ねても左右対称の顔にならない男性、体のメラニン色素が無いアルビノで肌も髪も色を持たず、視力にも異常を持つパラリンピック水泳代表の女性、片目がつぶれた男性、頬骨とあごの骨がなく、「宇宙人みたい」といわれたことのある男性…みな自分の見た目に苦しんできた人たちだ。

 著者の質問は彼らの病気のこと、友人のことそして、恋愛、結婚のことに及ぶ。印象的なのは、「今の顔と、症状のない顔を選ぶとしたらどちらか?」という問いに対してほとんどの人が長い時間考えてからゆっくりと答えていること。明るく前向きな彼らだが、「これからも自分は悩み続けていくだろう」と答えている通り、今後の人生ずっと、解決することのない見た目問題と付き合っていかなければならないのだ。彼らの言葉から伝わってくるのは、大事なのは悩みをなくすことではなく自らの問題とどう向き合い、折り合いをつけていくのかということ。これは見た目問題だけでなく、悩み多き現代人にも有用な考え方だといえるだろう。

 人との関わり合いが複雑になれば、悩みも複雑化する。年齢を重ねることで魅力が失われるのではないか不安な人、人からどう思われているか気にかかる人、やりたいことが見つからない人…世の中にあふれる「こうすれば悩みは解決する」と簡単にいう実用書では問題を解決できなかった人は、この見た目問題を抱える9人の言葉を噛みしめてほしい。うつむきがちに生きてきた人の背中を押し、人生の大事な一歩を踏み出すためのヒントがきっと見つかるはずだ。

文=銀 璃子