世界を震撼させた元CIAスパイが日本へ警告! 「携帯はあなたの情報を政府に知らせています」って本当なのか!?

社会

更新日:2017/5/8

『スノーデン 日本への警告』(スノーデン他/集英社)

 4月19日、組織犯罪を計画段階で処罰可能とする「共謀罪」の実質的な審議入りが決まった。

 日本弁護士連合会が猛反対する「共謀罪」とは、同会のホームページによれば、「2人以上の者が、犯罪を行うことを話し合って合意することを処罰対象とする犯罪のことです。具体的な行為がないのに話し合っただけで処罰するのが共謀罪の特徴です。」とある。

 いよいよ日本にも、マス・サーベイランス(不特定多数の一般人を対象とした情報収集)を極秘裏に断行する「超・監視社会」の影が忍び寄っているようだ。

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 2013年6月、CIAやNSAなどの情報機関職員だったエドワード・スノーデン氏による内部告発(スノーデン・リーク)が世界を震撼させたのを覚えているだろうか?

 米国に拠点を持つフェイスブック、ヤフー、グーグルなどのインターネット関連会社や各携帯会社の保有する、個人情報データ、メール、チャット、検索・通話履歴等の活用データ、GPSによる位置データがすべて、米国情報機関に提供されていることが明らかになった。しかもテロ容疑者などの特定人物だけでなく、世界中の不特定多数の一般人までもが、現在においてもその対象となっているのである。

「とはいえそれは米国機関のやること。日本人には関係ないし」とか、「テロを企てているわけじゃないから、チャットや検索履歴見られてもかまわないし」と、まるで対岸の火事のように思っている人も多いだろう。そんな人たちにゲキを飛ばしてくれるのが、『スノーデン 日本への警告』(スノーデン他/集英社)だ。

 本書は、2016年6月4日に東大本郷キャンパスで行われた、公益社団法人自由人権協会主催のシンポジウム「監視の“今”を考える」からの再録と追加取材によるものだ。その第一章では、シンポジウム当日にインターネット経由で行われた、スノーデン氏へのインタビューでのやりとりがまとめられている。

 本書でスノーデン氏は「米国の情報機関と日本政府は情報交換において協力関係にある」と断言する。つまり、携帯電話やフェイスブックなどが提供する個人情報やプライバシーが、いつどのような形で米国・日本政府によって活用され、あるいは侵害されるかは日本人にとっても無関係でないという。そのため、政府を監視しようという意識をマスメディアだけでなく、市民一人ひとりが持つことがとても重要なのだという。

 それにしてもプライバシーってなんだろうか? スノーデン氏の言葉を引用しよう。

プライバシーは自分であるための権利です。他人に害を与えない限り自分らしく生きることのできる権利です。思索する時、文章を書く時、物語を想像する時に、他人の判断や偏見から自らを守る権利です。

 2020年の東京オリンピックに向けて、今後日本でもテロ対策が強化される。その一環として行われると考えられるのが、政府による個人情報・プライバシーに対する監視システムの強化だ。日本にも迫りくる超・監視社会を見据えて、スノーデン氏はこう警告する。

プライバシーがなくなれば、あなたはあなた自身ではなくなるのです。社会のものになってしまうのです。(中略)社会があなたはどういう人でどういう生活をするべきだと命令するようになるということです。

 本書には他にも、私たちがどう監視されているのかの詳細、マスコミが果たすべき本来の役割と日米マスコミの現状についての言及、ムスリム社会への監視の問題点など、現代が抱える「超・監視社会」のリアルが浮き彫りにされていく。

 反原発や反憲法改正などで多くの市民が立ち上がったように、違法な監視システムに対しても実態をしっかりと把握し、私たち一人ひとりが異論・反論を唱えるべき時が来ているようだ。

文=町田光