「まちが、保育園になる」「保育園が、まちの頼れる存在になる」—これからの保育園のカタチとは?

社会

2017/5/15

『まちの保育園を知っていますか』(松本 理寿輝/小学館)

 待機児童の問題や、近隣住民の建設反対など、「保育園」に関するニュースを耳にすることも少なくないが、どちらかというと、ネガティブな内容が多い印象だ。それに比べて、保育園が子どものためにどんな場所であるべきか、子どもがそこから何を学ぶべきかなど、本質的な問題について語られる機会は、まだまだ少ないように思える。

 この状況で、保育の「質」や社会との関わり方に注目して、これからの保育園のカタチを模索しながら生まれたのが『まちの保育園を知っていますか』(松本 理寿輝/小学館)で紹介されている「まちの保育園」だ。

■「まちの保育」とは

 本書では、「まちの保育」について、2つの視点で述べられている。1つは、「まちが、保育園になる」視点。子どもの育ちや学びに、まちの「資源」を活かすことで、子どもの置かれる環境が充実し、子育て家庭の助けになるという考え方だ。もう1つは、「保育園が、まちの頼れる存在になる」という視点。保育園が、まちづくりの拠点として、地域のつながりを促進するような存在になるという考え方だ。

■その日の活動は子どもが決める

「まちの保育園」では、クラスごとに子どもと先生が集まる「朝の会」で、その日の活動を子どもが決める。その日にやりたいことを話し合い、子どもが決めた活動とグループに分かれて、午前中を過ごすそうだ。概ね2~3のグループに分かれるように子ども同士で調整してもらい、先生は「指導者」にはならない。そうすることで、子どもの主体的な学びを重視して、「探求の時間」を与えるのだ。

■まちと園を“ハード面”からつなぐカフェの併設

「まちの保育園」には、カフェが併設されているのも特徴的。保育園のカフェではなく、あくまでも“まちのカフェ”であることを目指し、園とまちの居心地いい距離感を保てるようになっている。そうすることで、園の関係者ではなく、近隣で働く人がカフェにやって来て、園の子どもとのコミュニケーションが生まれることもあるそうだ。

■まちと園を“ソフト面”からつなぐCC(コミュニティコーディネーター)という役割

 園と地域の境界をなくすために、「まちの保育園」ではCCと呼ばれる人たちが活躍している。子ども、保育士、保護者、地域の人たちなど、すべての人々のコミュニケーションを支える役割で、実際にCCとして業務に携わる人によれば「なんでも屋さん」のような存在らしい。保育士が働きやすい環境を整える、地域とのつながりを広げていく、子どもの親たちとのコミュニケーションなど、業務は多岐にわたるが、基本的には園の理念を共有したうえで、それぞれのCCが得意分野を活かしながら仕事を作っていく。

 著者が学生時代に児童養護施設のボランティアを行ったことがきっかけで誕生した「まちの保育園」。子どもだけではなく、親や保育士、地域の人たちなど、すべての人にとって大切な存在になっているようだ。実際に、ある町内会では、園との取り組みを通して、新しい行事も始まっており、子どもや若い人の力で町の活性化につながっているケースもある。

 ここでは紹介しきれなかったが、本書には他にも様々な新しい取り組みが紹介されている。「保育園」というテーマではあるが、著者の信念や行動力からは、たくさんの刺激がもらえそうだ。

文=松澤友子