おなかのトラブルがすべてわかる! 声に出せない恥ずかしいウンチの秘密

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公開日:2017/5/15

『誰にも聞けないウンチの話』(押谷 伸英/文芸社)

 昨年の「いいトイレの日」にあたる11月10日に文部科学省が公表した、「公立小中学校施設のトイレの状況調査の結果について」によれば、洋式便器の設置率は43.3%だそうだ。同資料では、洋式を多くする方針の学校設置者は85%というものの、耐震補強工事の予算などとの絡みもあって、なかなか進まないらしい。私が子供の頃は、それこそ学校の便器は和式ばかりで、家では洋式だったため使いづらく、そのうえ便秘がちだったから、個室トイレに長くこもるとクラスメイトにからかわれるのが嫌で我慢してしまい、ますます便秘になるという悪循環に陥っていた。

 しかし、『誰にも聞けないウンチの話』(押谷 伸英/文芸社)を読んでみたら、どうも私はとんだ勘違いをしていたらしい。本書によれば、人間は体の構造上「立ち小便はできても、立ち大便はなかなかできない」ようになっており、骨盤底にある肛門挙筋が「出口に蓋をするかのように便が漏れないよう」にしているという。このお陰で、便意を催してからトイレに駆け込んでも下着をおろすまで我慢できるわけだが、椅子に座った程度の姿勢では便の通り道の開き方は不十分。「上半身をかがめ、胸を腹に押しつけるようにして、少しばかり腰を上げて」という方が、よりすんなりと出せるそうだ。つまり、和式に座る姿勢のほうが排便しやすいと考えられ、もしかすると子供の頃の私も家で排便が上手くいかないのを、自分は便秘だと思い込んでいた可能性がある。

 その便秘についても、学校では1日1回以上の排便が当たり前かのように指導されてきたが、医師である著者は「1日2回から週3回くらい」の排便習慣が普通で、腹痛や腹部膨満感といった「日常生活に困るほど」の自覚症状がなければ便秘としなくても良いのではという見解だ。ただし、「便が細くなった」「便に血が混ざる」ということが続くようであれば、腫瘍(癌)などによって腸管が狭くなっている可能性もあるので、専門医に相談するよう勧めている。また、市販の便秘薬に入っていることが多い酸化マグネシウムは、以前は安全な薬と考えられてきたため高齢者にはお馴染みだろうが、近年では筋力低下や不整脈をきたしたとの報告があるそうで、注意を促している。

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 それから、消化というと胃だけの機能と思い込んでいる人もいるかもしれないが、脂質は腸で消化される。膵臓で産生される膵液に含まれる消化酵素の働きを助けるために、肝臓で産生された胆汁が十二指腸へと流れ込むことで脂質が分解・吸収され、その胆汁に含まれるビリルビンという色素が便に色をつけており、血液などの体液との混ざり具合がウンチの色を決めるのでウンチの色の観察は重要となる。そしてこのことは、胃もたれが食べ過ぎによるものとは限らず、腸での消化が滞っているときに胃から腸への送り込みを中断するから起こるということでもある。胃もたれだからと、安易に胃薬を店頭で買ったりせず、まずは薬剤師や登録販売者といった専門家に相談するのが肝要だろう。

 ところで、大腸検査というと肛門から内視鏡を挿入するのに苦痛を伴うイメージがあるが、これも近年では局所麻酔のゼリーを肛門に塗ったり、鎮静剤の注射を使用して眠っている間に検査を行なったりすることもできるそうだ。本書には、著者自ら鎮静剤を使わずに大腸に内視鏡を挿入して、Vサインをしている様子と自身の腸内の写真まで載せており、痛みの感じ方は人それぞれであるとはいえ、少しは怖さが取り除かれた気がする。

 他の人の排便の様子を訊くなど普通はしないだろうし、自分の便の状態を他の人と比べるなんて機会もそうはないはず。本書を読み、何かおかしいと思ったら一人で悩んでいないで、専門医を訪ねてみようと決めた次第である。

文=清水銀嶺