共感度高い「今日のあるある」が詰まった益田ミリの『今日の人生』。82歳で亡くなった父への想いも…

マンガ

公開日:2017/5/24

『今日の人生』(益田ミリ/ミシマ社)

 楽しみにしていたGWが終わり、仕事に戻った途端に時間に追われ、気づいた時には1日が終わっていた、なんていう日々を過ごしている人も多いのではないだろうか。しかし、そんな日常の中にも、実は、ちょっとした幸せや、忘れかけていた人の優しさ、どこかに置いていた想い、人生に少なからず影響を与えている大切な何かが隠れていたりする。

 はじめてやってみてわかったことがあった日、見知らぬ人同士の会話にほっこりした日、何かをきっかけに自分の人生を振り返ってみた日。私たちの人生はそんなささいな出来事を重ねた、たくさんの「今日」でできていることを、ゆるーくほのぼのとしたイラストで描くコミックエッセイで気づかせてくれるのが『今日の人生』(益田ミリ/ミシマ社)だ。

 著者の益田ミリさんは、恋愛や結婚、仕事などに揺れる30代女性の日常を描いて映画化された人気コミック「すーちゃん」シリーズなど、多数の著書を生み出している、大阪出身のイラストレーター。本書では、普段、あたりまえ過ぎて見落としがちな日常が、著者ならではのゆったり柔らかな視点と、時に鋭い感性で描かれている。2コマで終わってしまうくらいの「今日の人生」もあれば、数ページにもなる盛りだくさんな「今日の人生」もあって、くすっと笑えたり、じんわりしたり、せつなくなったり、思わず“ある、ある”とうなずいてしまう。

 例えば、ショッピングセンターのトイレに入ったら、自動で開閉する便器のフタが端から順番に上がって「ものすごいおでむかえ」をされた1日。周りの人に気を遣い過ぎて一人で勝手に疲れてしまい、自分の性格について考えてしまった1日。また、電車の中ではじめて見た盲導犬のけなげな姿に、自分がこれほどまでに誰かの役に立ったことがあるだろうかと生き方について考えてみる日もあったりする。

 本書には、82歳で亡くなった著者の父親への想いも描かれている。お盆の帰省中にささいなことでケンカし、そのまま帰ってしまったけれど、「親がいる夏も永遠ではない」と感じた日。父親が亡くなったあと、普段の生活の中でふと思い出して涙してしまう日。生きること死ぬことに対しての著者の想いも詩のように綴られている。どんな日も、ひとつひとつが大切な「今日の人生」なのだと、著者からの静かなメッセージを受け取れる。

 著者が子どもの頃に作ったという切り絵をモチーフにした本のカバーも印象的で、そばに置いて、肩の力を抜きたくなったときに、何度も読み返したくなる温かな一冊だ。

文=三井結木