「夢をあきらめる」ことで夢がかなう? 人生を豊かにする「5つの習慣」―お笑い芸人を通して考えるキャリア論

ビジネス

2017/6/13

『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方(星海社新書)』(海老原嗣生/講談社)

 今、あなたに夢はありますか? かないそうですか? 難しそうですか? それとも、諦められなくて苦しんでいますか? はたまた、「夢がないのが悩み」という方もいるかもしれません。

「夢」への向き合い方に悩んでいる全ての方へ、『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方(星海社新書)』(海老原嗣生/講談社)をおススメします。

「夢」って厄介ですよね。お笑いビッグ4のタモリ、ビートたけし、明石家さんま、松本人志はこぞって「夢はかなわない」「努力は報われない」といったような発言をしていますが、端から見たら、彼らはしっかりと夢をかなえているように思います。彼らの発言の真意は、どこにあるのでしょうか。

 本書は「夢について、どう対処したらよいのか、その料理法」を、クランボルツのキャリア論「計画的偶発性理論」に「お笑い芸人」を絡めて説明している異色の一冊です。

「計画的偶発性理論」は大学教授であるクランボルツが提唱した理論。その定理は2つ。「夢・趣味・目標は変化していくもの」であり、「夢の多くは偶然の出会いから生まれている」ということ。「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」のです。

 本書の結論として、「夢や目標を持つことは(たとえ実現しなくても)人生を豊かにすることなので、積極的に『夢の種』を持つべき」であり、「それらの夢の種は人との触れ合いによって偶然生まれるものだから、積極的にそういった≪偶然の出会い≫を増やしていこう」ということが書かれています。

 では、計画的に偶然を増やして、「夢の種」を導き出すにはどういった行動をすればいいのか。クランボルツは≪5つの習慣≫を提唱しています。

 まずは「新しいことに興味を抱く」好奇心。実際に行動に移すための冒険心、そして持続する力。(持続力を維持するために「きっと大丈夫」と思える楽観性も必要)、そして、経験を積んだからといって、頭が固くならない(周囲の意見を聞ける)柔軟性。

 これら5つの条件を保つことで、「いつでも新しい自分が見つかり、自分が磨かれる」とか。

 しかし、この5つを遵守していれば、「かならず夢がかなう」ということではありません。かなうこともあるし、かなわないこともある。これはもう仕方がないことなのです。

 大切なのは、「夢をきちんと消化する」こと。「夢は生煮え」だと一番厄介で「あの時、挑戦していれば」「きっと自分には才能があったはず」と後悔するのは、夢に対して行動を起こさず、消化していないからなのです。

 ここで、お笑いビッグ4の言葉の意味も、分かってきます。

 夢は「しっかりこだわって、消化して」、成功したら継続し、かなわなければ、スッキリとした気持ちで「次の夢に行く」ことが大切なのです。つまり、「夢は代謝する」もの。だから「好き」にこだわるべきだけど(だからといって必ずしも成功するわけではない)、固執するのではなく「消化する」ことが重要です。お笑いビッグ4の「夢と努力の否定的な言葉」も「(夢がかなうとか、かなわないとか、そういう問題ではなく)夢は代謝すべきもの」という意図が垣間見えるのです。

 そしてクランボルツの理論は、「夢を代謝する(後腐れないように、一生懸命がんばる)」ことにも活用できます。本書ではこの理論を「成功した芸人」(博多大吉や厚切りジェイソン)と「一発屋で終わってしまった芸人」(日本エレキテル連合)の違いで説明しており、いっそう頭に入りやすく、内容を深められる構成になっています。

 本書は「夢」というワードに良くも悪くも惹かれてしまう人に、希望の光をもたらしてくれる一冊になっていると思います。仕事に悩んでいる方にもおススメです!

文=雨野裾