“だいすけロス”を乗り越えろ! 独占ロングインタビューも掲載。親子で楽しめる卒業アルバムが大人気!

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公開日:2017/6/14

『おかあさんといっしょ だいすけお兄さん ありがとう、また会う日まで。』(講談社)

 もはや幼児番組というジャンルで片付けることができない、NHKの『おかあさんといっしょ』。その歌のお兄さんをこの春卒業したのが、横山だいすけさんだ。いや、だいすけお兄さんの方が、わかる人が多いかもしれない。歴代最長期間となる9年間も、子どもの前で歌い続けてきた。おなじみの「みんな、元気~? だいすけお兄さんも、元気~~!」という冒頭の挨拶も、月の歌で見せてくれたコスプレや変顔の数々も、今となってはもはや幻。番組卒業を惜しむ声が「だいすけロス」という言葉となり、今もSNSを駆け巡っている。

 6月7日(水)には名シーンが満載のDVD『「おかあさんといっしょ」メモリアルPlus~あしたもきっと だいせいこう~』(NHKエンタープライズ)が発売され、なんと初週売上4.0万枚。オリコン週間DVDランキング(集計期間:6/5~6/11)で総合1位にランクインするほどの人気ぶり。そんな「だいすけロス」な人たちにとって待望の卒業アルバムとなるのが、『おかあさんといっしょ だいすけお兄さん ありがとう、また会う日まで。』(講談社)だ。

 本書に掲載されている「横山だいすけ物語」によると、「歌のお兄さんになりたい!」という思いを抱くようになったのは、高校生の頃。子どもたちのために歌を思いたいという思いを胸に、音楽大学に進学。卒業後は劇団四季に入団し、歌のお兄さんのオーディションに合格したとある。

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 2008年にデビューした時の印象を、体操のお兄さんである小林よしひささんは、「だいすけお兄さんは、最初から“ザ・歌のお兄さんでした”」と太鼓判を押すほど。番組をグイグイと引っ張る、安定感のある存在のように見えたという。だが、スタジオで見せる笑顔とは裏腹に、だいすけお兄さん本人の悩みは日々深まるばかり。デビューしてからの3年間は、歌唱を指導する福田和禾子先生から「聴いていてつまらない」と指摘されて落ち込む毎日だった。

 転機になったのは、2011年に起こった東日本大震災。未曾有の被害をもたらした大震災と向き合うことは、歴代のお兄さんたちはもちろん、番組スタッフの誰一人として経験した人はいない。だからこそスタッフたちと何度もミーティングを重ね、被災地となった東北5県をメンバーとともに巡ることを決意したという。被災地で歌った曲には、あえて明るくポジティブな「ぼよよん行進曲」も選曲。大人も子どもも大喜びだったその姿を見て、悩みは一気に吹き飛んだ。「(それまでは)命がけで歌を歌っていない瞬間があったんです。自分がどう見られるかじゃなくて、歌い終わったら死んでもいいぜって思うぐらいに歌わなきゃダメなんですよね」と、掲載されている独占ロングインタビューにはある。


 このほかにも懐かしいデビュー時の記者会見映像、扮装やコスプレのコレクション、さらには共演者からの贈る言葉もある。特に巻末にあるだいすけお兄さんらしい手書きのメッセージは、必見だ。


「これからも僕は、歌のお兄さん。心底こう思えるのは、歌と子どもが大好きだから。大好きという感情は自然に出てくるもので、無理はなく、疲れることもありません」

 全身全霊を込めて歌い続けた9年間が、ページのすべてから伝わってくる。親子でページをめくるのもいいが、ママたちはカメラのファインダー越しにまっすぐ視線を向けるだいすけお兄さんに向かって、思わず「おつかれさまでした」と言いたくなるかもしれない。

文=富田チヤコ