『覆面系ノイズ』福山リョウコ、17年の軌跡となるイラスト70点以上を収録した初の画集が発売!

マンガ

公開日:2017/6/22

『福山リョウコ画集17NOISE ARTWORKS of RYOKO FUKUYAMA』(白泉社)

 ひとりの少女の歌声をめぐって、2人の少年が火花を散らすマンガ『覆面系ノイズ』(福山リョウコ/白泉社)。11月には実写映画公開も控え、累計160万部を突破する超人気作品の13巻とともに、作者・福山リョウコ氏の軌跡をたどる初の画集『福山リョウコ画集17NOISE ARTWORKS of RYOKO FUKUYAMA』(白泉社)が発売された。

(c)福山リョウコ/白泉社

 福山リョウコ氏の描く魅力のひとつに、そのまなざしの切なさがある。初の連載作品である『悩殺ジャンキー』は、美少女なのに緊張すると超極悪人面になってしまうモデルのナカと、男であることを隠してモデルとして最前線に立つウミの物語。

(c)福山リョウコ/白泉社

『モノクロ少年少女』は、ケモノの国の子女が通う学校に入学してしまった人間の少女・呉羽が、自分の居場所を見出していく物語。

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(c)福山リョウコ/白泉社

 どちらも素直になれない少年少女(+ケモノ)のすれ違う恋の切なさを描いているのだが、それ以前に、登場する全員が自分だけの居場所を探す物語でもある。もちろん、歌うこと、音楽を奏でることで自分だけの居場所を見出し、大好きな人に振り向いてもらいたいと願い続ける『覆面系ノイズ』も同様だ。

 なりたい自分になれない悔しさや、求める人にふりむいてもらえないさみしさ。誰もが抱えるジレンマを必死に乗り越えながら、手に入れたい何かのためにもがいていく。その過程で出会った大切な誰かを、自分以上に守りたいと願う。福山作品はいつもそんな強い想いを孕んでいる。

 だから登場するキャラクターたちのまなざしは、いつも、切ない。主人公だけでなく、その周辺のキャラクターたちさえも。物語を知らずとも、そのたたずまいや横顔、意志を強く宿した瞳に、はっと目を奪われるのだ。

 とはいえどれもこれもがシリアスなわけではなく、はっちゃけたコミカルさも福山作品の魅力のひとつ。かわいく明るいイラストも含め、70点以上のイラストが本書にはおさめられている。

 しかもすべての絵には、福山氏からのコメントが添えられている。実はあの絵とあの絵が対になっていたり、ひそかな意図がひそんでいたり。物語の「あのとき」を思い返しながら眺めるのも楽しいだろう。プロットからネーム、下絵を経て原稿になるまでの過程をすべて公開した特別収録も見逃せない。

 デビューから17年の月日をかけて、物語とともに福山氏が描き続けたその軌跡。ファンならずとも必見の一冊だ。

文=立花もも