SNSが脳を抑制し学力低下を招く!? 脳機能を高める「●●」で対抗する!

暮らし

公開日:2017/6/28

『致知ブックレット 素読のすすめ』(川島隆太、齋藤孝:著/致知出版社)

 若年層のSNSの利用が広がっている。大学入学前にLINEグループに入っていなければ、ぼっち確定。中学でもグループに入っていなければイジメの対象になりやすい、などの声を聞く。有効利用する子どももいれば、仕方なく利用する子どももいる。

 とかく人間関係の面で取り沙汰されるSNSだが、『致知ブックレット 素読のすすめ』(川島隆太、齋藤孝:著/致知出版社)は学力面でSNSの危険性を訴えている。本書は対談形式で話が進む。登場するのは、ニンテンドーDS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の監修などで有名な医学者の川島隆太氏と、『声に出して読みたい日本語』などで日本語ブームを起こした教育学者の齋藤孝氏。本書によると、SNSは主体的な作業のように思えるが、やっている最中は脳に抑制が掛かっているという。つまり、「脳が眠っている」ということだ。本書は、LINEの文面は極めてプアで、会話も「お昼何にする?」「カレー」「どこ行く?」といったようにまるで幼稚園児レベルである、と辛辣だ。

 川島氏によると、SNSは脳に抑制を掛けるばかりか、使えば使うほど学力が低下する。氏は7年間、仙台市の7万人の子どもたちの脳を追いかけて調べた。家で全く勉強していないグループにおいて、スマホやSNSを利用しない子どもはある程度の点が取れるが、その先、スマホやSNSを利用し始めると、睡眠時間が一緒であっても、利用時点から点数が下がっていったのだという。

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 スマホやSNSの利用で、脳の中の学習した記憶が消える。この事実に、齋藤氏もショックを受けている。

 逆に、脳を活性化させる作業に「黙読」が挙げられる。川島氏によると、通常の学習であれば意欲の程度で脳の働きが決まる。しかし、文章を読む作業は、意欲がなくても脳がよく働くのだという。氏は、文字を読む作業では、その刺激が脳を発達させる何らかの遺伝子を発現させているからでは、と考えている。

 文字を読む作業の効果は、「素読」によって高めることができる。音読の一つである素読は、文章の意味を考えずに読み上げるため、音読に比べて気軽に取り組める。しかし、素読であっても書かれている文章を音に変換する、口を動かす、息を出す、自分の声を聞くといった複数の機能が働くため、黙読に比べて格段に脳活動は活発になるのだという。

『にほんごであそぼ』の番組制作に携わる齋藤氏は、「子供たちは難しい言葉の意味が分からなくても面白がって次々に覚える」といい、自身が生徒時代に「寿限無」「般若心経」『論語』『孟子』などを素読した体験の意義を語っている。

 子どものSNSの利用を止めることは難しいかもしれない。しかし、子どもに素読を勧めてみる、親子ですこしの時間でも共に素読に取り組んでみる、といった工夫でSNSの弊害を緩和することができるのかもしれない。

文=ルートつつみ