『なぜペニスはそんな形なのか』―その理由を真面目に考えてみると…

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更新日:2020/5/11

 ただしこれは、ベリング自身の研究成果ではない。進化心理学者のゴードン・ギャラップとレベッカ・バーチの説を用いて、ベリングは自論を展開している。他の章もそうだが、彼はあちこちの文献から集めてきた論文をベースに、話を進めているのだ。だから中には「これってトンデモじゃないの……?」と思ってしまうものもあるが、その出典はすべて海外で発表されたものなので、裏を取るにはかなりハードルが高い。しかしこの本の目的はおそらく、ベリングの主張を伝えることではない。

 性に関するトピックを「○○にこう書いてあったんだけど、これってどうよ?」的に世界中の読者に提示し、分かち合うためのものなのだ。

 ベリング自身はオープンゲイ(カミングアウト済みのゲイ)であることから、女性の身体にまつわるオルガスムや射出(いわゆる潮吹き……)などについては、やや他人事っぽいテンションになっている。また「なぜ女の子どうしは残酷なのか?」という、女性からしてみたら失礼極まりないテーマもある。それでも彼がセレクトした性にまつわる33の「不真面目な科学」は、ふむふむとうなずきながら読むことができる(「タイムスリップして子供時代のヒトラーに会ったら、一体あなたはどうする?」を問いかける「ヒトラー問題で考える自由意志」は例外だが)。

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「トシもトシだし、性のことなんてもう卒業~」と思っていても、ページを開けば誰もがきっと、男子中学生の“性春”時代に逆戻りしてしまう(あなたがたとえ女性であっても)。ここで得た知識は決して大声で人には話せないけれど、知っておくとちょっとだけ人生に明るさが増す、かも!?

文=霧隠彩子