「筋肉質な暗闇」「レントゲンケーキ」…世界的アニメーション作家が描く、毒っ気たっぷりのユーモアあふれる絵本 山村浩二著『怪物学抄』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

「頭山」で日本人初、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた世界的アニメーション作家であり、絵本作家である山村浩二の最新絵本『怪物学抄』が2017年7月14日(金)に発売された。

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「筋肉質な暗闇」「レントゲンケーキ」…。不可解な怪物たちが繰り広げる、奇妙なカイブツショウ! 中世ヨーロッパの怪物学者が覗いた世界を描いた待望の絵本は、発売前から各界より絶賛の声が集まっていたほど。

これら奇怪千万な生き物が全部自分に見える人は、かなり正常である。柴田元幸(翻訳家)

個性を伸ばしすぎた奴らが、壊れながら生きてる。かっこいい。穂村弘(歌人)

日本には、真のデーモンたちが棲んでいる。ヤン・シュヴァンクマイエル(「アリス」映画監督)

著者からのメッセージ
20代の頃、澁澤龍彦や荒俣宏の紹介する中世ヨーロッパの怪物達や、土佐光信の百鬼夜行絵巻に魅了され、それらは自分の身となり、肉となり、とても近しい存在となっています。怪物をモチーフにしたスケッチは、そのころからこれまで30年間の自分の手帳の中に度々登場しています。それを絵本やアニメーションにすることも何度か考えましたが、見せ方、たとえば物語といった枠組みの決定的なアイデアがなかなか出ませんでした。今回の怪物達の直接的なデザインは、2013年ごろにスケッチした怪物のイラストが土台となっています。それとは別に、聞き間違えや、翻訳されることで奇妙に聞こえる言葉から発想した形容詞と名詞の変な組み合わせの断片的な言葉のメモを時々書いていました。ここ数年言葉と映像を並列にあつかう見せ方を探求していた流れで、その怪物の絵とテキストが自分の中で繋がり『怪物学抄』の創作が加速しました。もうひとつ、2014年ゲーテの生家で見た家庭用人形劇の舞台装置が、今回の怪物をみせる枠組みのアイデアの源泉となっています。アニメーションは、ヘンデルの音楽が美しく映像と共鳴し、絵本は、装丁も手がけ、愛着のある作品となりました。皆さんに、お気に入りの怪物があることを願っています。

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<内容紹介>
中世ヨーロッパの架空の怪物学者が観察した、さまざまな怪物たち。家庭用人形劇を思わせる舞台を背景に、こわかわいいモンスターたちが、まるでショウのように、それぞれの生態をあらわにする。彼らの不可思議な動きがまざまざと感じられるすばらしいタッチ。「飼いならされた野生」「筋肉質な暗闇」など、シンプルなことばとことばの出会いがもたらす奇妙な衝撃。ページをめくる喜びにひたって安心していてはいけない。ラストまで、あなたも無事ではいられない! 毒っ気たっぷりのユーモアあふれる絵本の誕生!!

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山村浩二
アニメーション作家・絵本作家。1964年生まれ。東京造形大学卒業。「頭山」が世界の主要アニメーション映画祭で6つのグランプリを受賞、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされる。また「カフカ 田舎医者」が7つのグランプリを受賞。これまでに世界4大アニメーション映画祭のすべてでグランプリを受賞、国内外の映画祭で90以上の賞を受賞。他のアニメーション作品として「パクシ」「年をとった鰐」「マイブリッジの糸」などがある。また絵本作品として『ぱれーど』『おやおや、おやさい』(文・石津ちひろ)などがある。『ちいさな おおきな き』(作・夢枕獏)で第65回小学館児童出版文化賞受賞、『くじらさんのー たーめなら えんやこーら』(作・内田麟太郎)で第22回日本絵本賞受賞。映画芸術科学アカデミー会員、東京藝術大学教授。

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