「子ども欲しい!」って言えない…夫と妻のホンネ――劔樹人×犬山紙子×赤ちゃん 家族鼎談(2)

出産・子育て

2017/8/3


変わったのは、お互いがいかにストレスを溜めずに楽しく過ごすかということ
 

 1人のときから始まって、結婚して2人になり、やがて子どもが生まれて3人に……劔さんの『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』と、犬山さんの『私、子ども欲しいかもしれない。 妊娠・出産・育児の“どうしよう”をとことん考えてみました』には、劔さんと犬山さんが出会い、いろいろ悩みながら、2人なりのルールを作り、家族になっていく物語が様々な視点から描かれています。結婚とは、夫婦とは、親とは、子育てとは「こうあるべき!」というホコリをかぶった古~い考えで頭がコチコチな人、そして妊娠・出産・育児に悩んでいる人にぜひとも一緒に読んでほしい2冊なのです。

■実はいろいろ考えていた

――劔さんの『今日も妻のくつ下は、片方ない。』の「変化。」という回から「子どもをどうするか」という夫婦の話し合いが始まりますが、劔さんは「欲しい」とも「欲しくない」とも言わなかったそうですね?

劔樹人(以下劔) 僕がそんなに収入がないので、やはりなんとなく発言力を弱くしてしまうところがあるんです。例えば「子ども欲しい!」って言えない、「全然金もないのにどうやって育てるんだ」って思ってしまう。

犬山紙子(以下犬)えっマジ? そんなこと思って欲しくないんだけど!

 自分でそう思っちゃうところがあって。やっぱりそのうち自分も収入をちゃんとしたい、という気持ちは常にあって、でもまだそのときが来てないっていうか……それは20歳くらいからずっとそう思ってるんだけど。

 つるちゃんはもし私が子どもができにくかったときに、追い詰めないために何も言わないんだと勝手に思ってた。

 それもあるよ。

 ちょっと! どれがホントなの?(笑)

 どれもホントだよ。子どもを育てるとなるとひとり2000万円かかるとか、そういうことも考えないといけないし、もしそうなったときに自分が稼いでいないから、パッと決断できないというのがあって。卵巣嚢腫になったのも見ていたから、卵巣や子宮の病気も身近に感じて。子どもが産めない、産みにくい体になることもあるんだなあとも思って。そしてもし妊娠したら、お腹を痛めるのは女性だし。

 私は結構何回もつるちゃんに聞いてたんですよ。私は子ども悩んでる、どうしよう、つるちゃんはどう?って。でも「僕はどっちでもいいよ」っていう答えを崩さないんです。だから本心が見えてこないところもあったんですけど、逆にそれがプレッシャーにならなかったところもあって。つるちゃんなりに、いろいろ考えてくれてたんだね。

 正直、そのときの気持ちはもう……何を思っていたのかはだいぶぼんやりとしてきているんだけど(笑)。でも本当に慎重に慎重にしていたのは覚えてます。傷つけないようにって。

 妊娠中も慎重だったもんね。

 うん、妊娠前と同じ感覚でずっと。相手の苦労も知らずに変なことを言わないように、って気をつけてたんですけど、それが却って逆撫でしてしまうこともあって(笑)。

 うっふっふ(笑)。でも「妊娠した奥さんの機嫌を出産まで一回も損ねない」というミッションをコンプリートせよ、っていうゲームがあったら絶対無理だよね。

 無理ですね。だから僕はとにかく「どっちでもいいや」って思ってた。子どもがいなくてもやっていけるし、いたらいたで頑張る、っていう。


 じゃあ私と気持ちは同じく、だったんだね。

 うん。

――子どもを持つということについては、『今日も妻のくつ下は、片方ない。 』の最後のエピソード「それから」がジーンとしました。思ってた人生とは違うけど、それもいいよね、という。

 ありがとうございます!

■子どもが生まれて変わったこと、変わらないこと

――お子さんが生まれて、変わったことはありましたか?

 生活はガラッと変わりましたね。私は気持ちもガラッと変わるのかなと思ってたんですけど、妊娠しているときと同じで、ベースは私、そこにボードゲームが好きとか、仕事したいとか、つるちゃん好きみたいなのがいろいろあって、その中に子ども可愛い、大事にする、ということが増えたという感覚でしたね。ほかに大きく変わったのは……健康考えて、野菜を食べるようになったくらいかな。そして禁酒が一番キツイですねぇ(笑)。

 あとは子どもを産む前って、子どもの世話は大変で疲れるものというイメージがあったんですよ。甥っ子や姪っ子の世話がめちゃくちゃ大変で、見ていると可愛いんだけど、責任もすごくある。だから子どもの世話ってキツイんだろうなって想像してたら、なんか逆にしたくなるものなんですよ、キツイけど気持ちはすごく充実している。以前は「世話に時間取られて自分がやりたいことができなくなる」と思ってたんですが、むしろ世話がやりたいことなので、やりたいことができている、という嬉しい変化もありましたね。

 僕は生活が変わることを念頭に置いてたし、それは2人で話し合って、変えていくようにしてきたのであまりないですね。今になって思えばだいぶ変わったなと思うけど、それは変えようと思って変えたものだし。あとは会社でやっていた仕事をやめて、原稿の仕事と演奏の仕事をメインに絞りました、幸いそれが自宅でできるものが多くて。一番大きいのはそこですかね。あとは出歩かなくなったなー。

 その出歩かなくなったというのって我慢しているって意味合いだったら結構危険だなと思ってるんですよ。つるちゃんにはもっと出歩いて、友達と会うとか、息抜きをしてほしい。でもつるちゃんはそういうことに対して罪悪感が強いタイプで、結構言ってもやってくれなくて。

 それはでもウチの家庭のバランスなのかなって思ってます。お互いに「もっと自由にしてくれ」と気にし合うみたいな。でも子育てしている生活の中で時間をどうするか、というような状況を組み立てるのは上手く行ってるのかなって思ってて。だから出かけられないストレスはそんなにないんだよね。それが普通になってるんで。ハロプロ関係とか、どうしても行きたいものはありますけど(笑)。


 あとは友達が家に来てくれるよね。私が仕事から帰ってくると、つるちゃんがオタク仲間とワイワイしていることが結構あって。それやってもらえると、私も安心するんです。あ、つるちゃん楽しそう、って。

 僕は僕で、もっと今までみたいにお酒飲みに行くとか全然してもらっていいと思ってて。でもお互いに「出歩きたい!」っていうハードルが下がってるところありますね。行きたいけど、まあいいか、という。

 私は行きたいやつはまったく我慢しないけど(笑)。でも行きたいやつが減ったというのはあるね。子どもと一緒にいたいという気持ちがあるから、家にいたくなった。

 そうそう、僕もそう。子どもと一緒にいたいという強い気持ちがあって、それ以外のことはそこまで欲さなくなったなって感じてて。

 とはいっても、私は週3で行きたいやつとかあるわけですよ、仕事以外に(笑)。

 それは行ったらいいよ。僕は全然我慢してるつもりはないし。「まあいいや」って、そんなに心が動かなくなってきているというのはあるんだよね。

 子どもが生まれてから「お互いがいかにストレスを溜めずに楽しく過ごすか」というのが一番変わったことかもしれないですね。つるちゃんのストレスが今どれくらいあるのか、ツラくなってないか、体調はどうか、どっちかの負担が大きくなってないか、私も含めて考える、という。それまでの私は『今日も妻のくつ下は、片方ない。』で描かれている通り、酔っ払ったりしてつるちゃんには迷惑かけてました(笑)。あとは友達がよく家に遊びに来てくれるっていうのも大きいね。

 そうだね。

 そうすると私たちも楽しいし、しかもいろんな大人たちが来てこの子を可愛がってくれたり、様々な価値観を教えてくれたりするんじゃないかなって思うんだ。

→劔樹人×犬山紙子×赤ちゃん 家族鼎談(3)に続きます

子どもが生まれて、その後どうですか? 劔樹人×犬山紙子×赤ちゃん 家族鼎談(1)

取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ) 写真=花村謙太朗

[プロフィール]
つるぎ・みきと ミュージシャン、主夫、漫画家。1979年新潟県生まれ。大学時代からベーシストとして活動。2008年にバンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」に参加。その後バンド「神聖かまってちゃん」の担当マネジャーとして活躍。現在は主夫業と子育て、執筆業をこなす毎日。著書に『あの頃。男子かしまし物語』『高校生のブルース』。

いぬやま・かみこ 作家、タレント。1981年大阪府生まれ。2011年、ニート時代に出会った美人なのに恋愛が上手くいかない人を取材した『負け美女』でデビュー。雑誌連載やラジオ、テレビ出演などマルチに活躍中。著書に『言ってはいけないクソバイス』『マウンティング女子の世界 女は笑顔で殴りあう』(瀧波ユカリとの共著)など。