MOE創作絵本グランプリ入賞作が書籍化! 滑川まい著『とりこしふくろう』

文芸・カルチャー

2017/8/8

『とりこしふくろう』(滑川まい/白泉社)

 思いやりは、想像力だ。誰かに優しくしたいと思ったら、自分がしてあげたいことでなく、相手がされて嬉しい、ためになることを考えるのが一番だ。夫婦や友達同士、どんな関係であってもそれは同じだけれど、とくに自分で主張することができない子どもを相手にするときは、ふんだんに想像力を働かせることが優しさにつながるんだなあ、と絵本『とりこしふくろう』(滑川まい/白泉社)を読んで思った。

 物語はいたってシンプル。雨降る夜にふくろうのおじいさんがどこからか飛ばされてきたひよこを拾う。こまったこまったと言いながら、幼いひよこにあたたかい飲み物をやり、お風呂に入らせ、ふとんで寝かせてあげる。そしてそのあと考えるのだ。この子をこれから育てていくにはどうしたらいいだろう? 自分に何ができるだろう? と。そして夜のうちに、思いつくかぎりのそなえをはじめる。

じいちゃんが用意してくれたおふとんで眠るひよこ

 自分の子どもが着ていた服をひっぱりだし、病気になった場合の薬をさがし、さびしくなって泣いたときに慰めるためのおもちゃを準備。すべってころばないように掃除をして、すくすく育つために不可欠な朝ごはんをつくりはじめ、何が好きで何が嫌いかわからないから、思いつく限りのおいしそうなごちそうでキッチンをいっぱいにさせていく。たった一夜の、ふくろうじいさんの奮闘。とくべつな冒険は何もない。だけどそれだけのことで、おじいさんの惜しみない優しさと、自分とは関係ないはずのひよこが育つ未来へのわくわくが伝わってきて、心がほっこりあたたかくなる。

ひよこを見守るじいちゃん

 どんな困った事態が起こっても対処できるように。ひよこが悲しんだり、苦しんだりすることのないように。想像できうるすべてに対して、自分のできることをしていくおじいさん。なんて愛に満ちているんだろう、と心がぎゅっとした。自分もこんなふうに、大人たちに守られて大きくなったのかもしれないと思うと胸がつまったし、自分も誰かにこんなふうに優しくなりたいとも思った。タイトルにもあるとおり、けっきょくすべてはおじいさんの「取り越し苦労」に終わるのだけど、それでもおじいさんの優しさは消えない。用意した朝ごはんも、幸せを願う気持ちも、ひとつも無駄にはならない。

あさがにがてなじいちゃんは再び心配に…

 本作の何が優れているって、おじいさんと子どもが、ふくろうとひよこだということだ。人間でいえば人種が違う。育ってきた環境も、あたりまえに必要とすることも、もしかしたら言葉だって違うかもしれない。それでも、だからこそ、自分と同じ生きているものとして必要な思いやりをもって接することが大事なんだということが描かれているのだ。

 こんな優しさが連鎖すれば、誰もが人を思いやることができれば、きっとみんなが幸せに満ちた人生を送れる。『とりこしふくろう』は、人と人とがつながるってこういうことなんだとあたたかな気持ちになれる一冊。

文=立花もも