介護離職後に陥る負のスパイラル…

暮らし

2018/2/2

 豊富なデータと実体験に基づいた「仕事と介護を両立させる人生」を提案する、『ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由』が2018年1月26日(金)に発売された。

 いま介護をするために離職する人は、年間10万人を超えるという。「介護と仕事の両立が困難」「後悔しないように、親の介護をしっかりとやりたい」などが離職の理由にあげられるが、共通して「介護に専念すれば、今よりは楽になるはず」という判断がある。しかし調査によると、介護離職をした人の70%は「さらに負担が増えた」と回答しているそうだ…。

 同書では、企業の取締役を務めながら20年以上にわたって母親の介護を続けている著者が、仕事と介護を両立していく方法を解説する。ここでは、著者の提案の一部をダイジェストで紹介しよう。

■介護に関する無知や思い込みが離職につながっている
 そもそも、なぜ介護離職に踏み切るのか? 介護は育児とは違って要介護者の異変がきっかけで突然始まるので、介護未経験者であれば無知な状態からスタートする。また、「親の介護は子どもがするのがベスト」と思い込んでしまい、親孝行のつもりで離職して介護に専念してしまうケースが多い。

■介護離職後に陥る負のスパイラルとは?
 統計によると、介護離職のあとに再就職しても1年以上の期間を要し、収入は男性で4割減、女性で半減の人が最多を占める数字が出ている。また、介護期間が要介護者の症状の悪化によって延長すれば金銭的な負担も増えていく。今後の介護者の生活にも、貧困や介護離婚といった大きなリスクがつきまとうはず。

 また、精神的な負担も想定しなければいけない。現状は在宅介護を行う介護者の64.5%が「抑うつ状態」(うつ病の一歩手前)といわれている。介護のプロによる虐待がニュースになるが、家族による虐待件数はその100倍という報告も。精神的な負担を減らすためにも、介護のプロに相談しながら介護サービスを活用し、各地域にある介護に関する“家族会”で情報を共有しよう。

 仕事と在宅介護をうまく両立している人は、身体介護や家事は自分で行わず、介護サービス事業者にまかせているという特徴もみられる。そもそも「子どもの介護離職を親は喜んでくれるか?」という点も考えなければいけない。

■気持ちが折れずに介護が続けられる秘訣
 企業の介護支援体制は「まだこれから」というのが多いものの、多くの企業が介護離職の増加に危機感を持ち始めている。離職を決断する前に会社へ相談して働きかければ、企業から支援が得られるかもしれない。介護はいつ終わるかわからないが、自分なりの「意義」や「信念」を見い出していれば、長期にわたって頑張れるはず。環境を整えて周囲と上手に介護を分け合い、チームとして成果を出すことが大切になっていく。

<同書の項目>
第1章:介護離職につながる3つの誤解
・介護離職をしてもなんとかなる
・介護離職をすれば負担が減る
・子どもが親の介護をすることがベスト

第2章:介護離職を避けるための具体的な方法
・介護職(介護のプロ)に人脈を作る
・家族会に参加する
・職場の支援制度と仕事環境の改善に参加

第3章:介護を自分の人生の一部として肯定するために
・介護とは何かを問い続ける
・親と自分についての理解を深める
・人生に選択肢がある状態を維持する

酒井穰(さかい・じょう)
介護離職を防ぎつつ、質の高い介護を実現することを目的として設立された株式会社リクシス 取締役副社長 CSO。1972年東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg大学 TIAS School for Business and Society経営学修士号(MBA)首席(The Best Student Award)取得。商社に勤務後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職。帰国後、フリービット株式会社の取締役を経て独立。介護メディアKAIGO LAB編集長・主筆、新潟薬科大学 客員教授、KAIGO LAB SCHOOL学長、NPOカタリバ理事などを兼任。主な著書に『新版 初めての課長の教科書』、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』、『幸せの経営学』、『曹操―乱世をいかに生きるか』など。

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