生涯を描いた映画公開で再注目! 25歳でこの世を去った俳人・住宅顕信の句集『未完成』が16年ぶりに増刷

文芸・カルチャー

更新日:2019/7/3

『未完成』(住宅顕信/春陽堂書店)

 急性骨髄性白血病により25歳の若さで逝去した自由律俳句の俳人・住宅顕信(すみたくけんしん)の句集『未完成』(春陽堂書店)が2003年に刊行以来、再び注目を集めている。

 そのきっかけとなったのが2019年に公開された住宅顕信の生涯を描いた映画『ずぶぬれて犬ころ』(監督・本田孝義)。ストーリーは、中学校でいじめにあっている少年が教頭先生から借りた住宅顕信の句集『未完成』を読み始め、その俳句と生きざまに感銘を受けて少しずつ変わっていく、というもの。劇中では住宅顕信が孤独と絶望の中で俳句とともに生きた半生が見事に描かれており、現代を生きる人々に「生きろ」という強いメッセージを送る。

 作品を手掛けたのは『船、山にのぼる』『モバイルハウスのつくりかた』などこれまでドキュメンタリー映画を製作し、今回初の劇映画に挑んだ本田孝義監督。撮影は『人のセックスを笑うな』『ニシノユキヒコの恋と冒険』の鈴木昭彦氏。この映画が公開されるとともに句集『未完成』に関する読者からの問い合わせが急増し、ついに2019年6月28日に16年ぶりに増刷されることになった。

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 住宅顕信は1961年、岡山県生まれ。19歳の頃に5・7・5にとらわれない自由律俳句に興味を持ち、同時に仏教にも傾倒。22歳の時に浄土真宗本願寺派の僧侶となる。その一方で1歳年下の女性と結婚して1児をもうけるが、23歳の時に急性骨髄性白血病を発症し、その後離婚。晩年は病床で子育てをしながら俳句を詠み続けたという。

「若さとはこんな淋しい春なのか」
「抱きあげてやれない子の高さに坐る」
「気の抜けたサイダーが僕の人生」

 短い生涯の中で、出家、結婚、発病、離婚と波乱万丈な人生を過ごした住宅顕信が遺した自由律俳句は281句。句集『未完成』にはそのすべてが収録されている。仕事に行き詰まりを感じていたり、精神的に落ち込んでいたり…。絶望の中に“生”を感じる顕信の俳句は、ストレス社会に生きる現代人の心を励ましてくれるだろう。

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