ヒットは“散らかった部屋”から生まれる!? 『すべてがFになる』『スカイ・クロラ』の森博嗣が説く「アンチ整理術」

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公開日:2019/11/10

『アンチ整理術』(森博嗣/日本実業出版社)

 多数のヒット作を生み出してきた小説家・森博嗣が、“整理整頓”について語った『アンチ整理術』が、2019年11月8日(金)に発売された。

 著者はこれまでの作家生活で350冊以上を執筆し、総収入は20億円を超えている人気作家。ドラマ・アニメ化もされた『すべてがFになる』や押井守監督によって映画化された『スカイ・クロラ』などを手掛け、“理系作家”ブームの先駆けとして数多くのクリエイターに影響を与え続けてきた。

 作風としてはシンプルな文体や洗練されたロジックが物語を彩っていることで有名。そのため整った環境で淡々と作品を生み出しているイメージがあるものの、実は「書斎も工作室も、主な活動場所は散らかり放題」だという。

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 必要最低限のものだけを残し、無駄のない生活を送るミニマリストが注目を集めている昨今。著者のスタイルはそれと真っ向から対立するように見えて、「メモは取らない」「ほとんどのデータは保存しない」といったミニマリストのような習慣も持っているそう。独自の整理術の根幹にあるのは、“ものを整理するのではなく、自分自身を整理する”という考え方だ。

 同書では表面的な整理整頓にとらわれず、様々なしがらみから自分を解き放つ方法が紹介されている。そのため片づけが苦手で肩身の狭い思いをしている人はもちろん、スマートな生き方を模索するビジネスパーソンや整理整頓を通じて何か新しいものを生み出したいと考えている人にも啓発を与えてくれるはず。

 ふだんは書籍執筆の依頼があっても9割は断っているという著者が、「幾度も求められるということは需要がある」「つまり皆さんが知りたいテーマなのだろう、と解釈できる」ことから引き受けたという知的エッセイ。環境の整理整頓と散らかった自己の整理整頓をめぐる思索は奥が深く、一流作家が説く“創造的仕事術”としても楽しめる。ぜひ本を手に取って、人生をより楽しむためのヒントを探してみてほしい。