お江戸の人情に癒される! と評判の『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ』シリーズ最新刊の読みどころ

文芸・カルチャー

公開日:2020/11/6

湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十日夜の巻
『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十日夜の巻』(中島久枝/ポプラ社)

 江戸時代を舞台とした人情小説『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十日夜の巻』が、2020年11月6日(金)に発売される。同作は、2017年から刊行が始まった「湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ」シリーズの最新刊にあたる作品だ。

 物語が繰り広げられるのは、上野広小路から湯島天神に至る坂の途中にある「如月庵」。知る人ぞ知る小さな宿だが、最高のもてなしによって旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えてしまうと評判を呼んでいる。

 火事で姉と離れ離れになった少女・梅乃は、そんな如月庵で部屋係として働き始めることに。しかし訪れるお客は、何かを抱えたワケアリの人ばかり。さらに奉公人たちも美人で男好きな部屋係、強面で無口だが心はやさしい板前など、個性的な人々が揃っていた。

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 魅力的な世界観で描かれる少女の成長ストーリーは、多くの読者を魅了した様子。シリーズ第1弾が刊行された際には、「どっぷり時代小説ではないので、初めての私でも読みやすかった。梅乃の成長が切なくもあり、微笑ましくもあり、感情移入できる。気がついたら応援していた」「おせっかい気質でさまざまな問題を解決に導いていく物語。江戸の人情を感じられて面白い」「頑張る梅乃にちょっとハラハラしたけど、成長していく姿にホッコリ」と大きな評判を呼んだ。

 また2018年に刊行された第2弾『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 三日月の巻』では、女中頭・桔梗の過去にまつわるエピソードが展開。ネット上では「やっとワケアリの謎が1つ解けた。桔梗、切ないね」「桔梗の過去に触れるパートと如月庵の日常を描くパートが交互に書かれており、シリアスとほんわか、2つの雰囲気を楽しめました」「どの話もじんわりと温かい気持ちにさせてくれる」など、さまざまな反響が上がっている。

 最新刊『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 十日夜の巻』でスポットが当たるのは、こちらもワケアリの板前・杉治。ある日、杉治は荷車にひかれそうになった薬種屋の娘を助け出し、名乗らずに立ち去る。しかし薬種屋が助けた者を探しているらしく、杉治は「自分の身元」が割れたのではないかとおびえることに――。

 現代社会が置き去りにしてきた情緒や人の情けを描き出した人気小説。本を開けば、お宿の人々が疲れた心をやさしく癒してくれるはずだ。