累計16万部突破! 女子中学生が数学ミステリーを解く

文芸・カルチャー

2012/7/17

『ダ・ヴィンチ』8月号では、一般小説の読みごたえを持ちながらライトノベルさながらキャラクターを立たせた“キャラ立ち小説”を、人気の新ジャンルとして徹底紹介。なかでも、累計16万部を突破し、書店員からも強い支持を得ている「浜村渚の数学ノート」シリーズを大きく取り上げ、著者・青柳碧人氏にインタビューを行っている。

「浜村渚の数学ノート」シリーズは、その名のとおり彼女を主役とした数学ミステリー。円周率、フィボナッチ数列、n進法など数学にまつわる謎が、女子中学生・浜村渚によってスルスルと解き明かされていく。……と言うと、数学嫌いの方は苦い顔をするだろう。しかし、小難しい理屈や長々とした薀蓄は一切なし。笑いあり冒険活劇ありの極上エンタメとして楽しめる。

義務教育から数学が消え、数学テロが横行する現代日本。本シリーズを一読し、まず惹きつけられるのは不思議な世界観だろう。この設定が生まれた背景には、青柳さん自身のある体験があったという。
「僕は小説を書くかたわら、塾で中学生に勉強を教えています。ある時生徒から“数学を勉強して何の役に立つの?”と聞かれたんです。“いい大学に進学できるから”と答えるのは簡単ですが、そんな言葉で生徒をねじ伏せたくはありません。そこで自分なりの答えを出そうと思い、数学が排除された世界を舞台にこの物語を書きました」

実は浜村渚のモデルになったのも、かつての教え子なのだとか。とはいえ、モデルをそのままトレースしたわけではない。その魅力をより印象づけるため、青柳さんは渚にある特徴を与えている。
「まず考えたのが、衣装と小道具です。ヘアピン、シャープペン、そしてノート。高校時代、演劇部で脚本を書いていたのですが、当時からセリフより先に衣装や小道具を考えていました。美少女テロリストのキューティー・オイラーなんて登場するたびに衣装が違うでしょう? 長編では数式の書かれたビキニを着て登場しますが、これはぜひ実現したかったアイデアなんです(笑)」

最新刊『3と1/2さつめ』では、初の長編ミステリーに挑戦。数学史上最大の難問「フェルマーの最終定理」にまつわる謎が描かれる。
「本編では数学テロ組織との対決を描きますが、長編は登場人物たちのサイドストーリーです。しかも今回は、“読者への挑戦状”まで入った本格ミステリー。フェルマーはフランスの数学者なので、フランス映画のようなエスプリの効いた小説にしたいと思っていました。ホテルの従業員もフランスの数学者になぞらえているんですよ」

文=野本由起
(『ダ・ヴィンチ』8月号「文庫ダ・ヴィンチ 一般文芸×ライトノベル キャラ立ち小説が今面白い!!」より)