キーワードは“当たり前からの変化”「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」が発表! 総合グランプリは『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』

ビジネス

公開日:2021/2/22

読者が選ぶビジネス書グランプリ2021

 ビジネススクールのグロービス経営大学院と、ビジネス書の要約文をアプリやサイトに配信するインターネットサービス「flier(フライヤー)」を運営する株式会社フライヤーは、ビジネスパーソンが「読むべき本」を選出するコンテスト、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」の授賞式を、2月16日にオンラインで開催した。

 今年で6回目となるビジネス書グランプリは、ビジネスパーソンの読書習慣を育てて出版業界を盛り上げたいという思いから創設された。総合グランプリと政治・経済部門のW受賞を果たしたのは『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(安宅和人/ニューズピックス)。ほか、イノベーション、マネジメント、自己啓発、リベラルアーツ、ビジネス実務の5部門と、コロナ禍を支えた特別賞を含め計7作品の表彰が行われ、著者や担当編集者が登壇した。

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」受賞作品は以下の通り

総合グランプリ 『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(安宅和人/ニューズピックス)
イノベーション部門 『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子/ポプラ社)
マネジメント部門 『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介/日本能率協会マネジメントセンター)
政治・経済部門 グランプリ作品
自己啓発部門 『科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方』(鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)
リベラルアーツ部門 『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント:著、梶山あゆみ:訳/東洋経済新報社)
ビジネス実務部門 『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)
特別賞 『人は話し方が9割』(永松茂久/すばる舎)

 各部門の紹介と著者のコメントをみていこう。

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【イノベーション部門】『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子/ポプラ社)

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか
『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子/ポプラ社)

【書籍紹介】
ワークライフバランス世界1位、フィンランド流の働き方&生き方をひもとく。フィンランド人は、仕事、家庭、趣味、勉強、となんにでも貪欲だが睡眠時間は平均7時間半以上。やりたいことはやるが、ゆとりがある生活を過ごしているのはなぜか。

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか

【著者コメント】
フィンランド人が幸福度3年連続1位になった理由のひとつは、年齢性別の枠組みを外し、自分の価値観に沿った生き方をしている人が多いことも影響していると思います。
また、長時間働くことが当たり前なのではなく、決められた時間内、少ない人数で効率よく生産性を上げて働き幸福度を追求しています。

【マネジメント部門】『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介/日本能率協会マネジメントセンター)

心理的安全性のつくりかた
『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介/日本能率協会マネジメントセンター)

【書籍紹介】
組織・チームにおいて大注目の心理的安全性とは何か。職場・チームで高めるアプローチ方法をつかむ。「健全な衝突」こそがチームの力を引き上げる。施策だけではうまくいかない心理的安全性の効果的なつくり方とは。

心理的安全性のつくりかた

【著者コメント】
個人事業の方も含めてチームや組織と関わって働いています。一人一人が仕事を通して輝ける環境、つまり心理的安全性が高く、自分の力が出し切れる職場環境が大事だと思っています。自分がチームリーダーでもそうじゃなくても、リーダーシップを発揮して一歩踏み出していただきたい。自分の行動を変えることで相手の反応や現実のフィードバックを見ながら、さらに自分の行動を変えてみる。その繰り返しが大事だと思います。

【自己啓発部門】『科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方』(鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)

科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方
『科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方』(鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)

【書籍紹介】
転職・複業・独立…キャリアの多様化が進む時代に、“自分にぴったりの仕事”を選ぶには? 人生の岐路で役立つ、意思決定の技術!

科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方

【著者コメント】
「好きを仕事にするな」「仕事を金で選ぶな」など、僕の中では当たり前だと思っていたことが、相手にとってはそうではなかったことが本の執筆に繋がりました。
また、適職には正解がないことを理解することが大切。人生は仮説と検証の繰り返しなので、自分なりの仮説を立てて、それを検証する作業になると思います。

【リベラルアーツ部門】『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント:著、梶山あゆみ:訳/東洋経済新報社)

LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界
『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント:著、梶山あゆみ:訳/東洋経済新報社)

【書籍紹介】
「老化は治療できる病である――」
人類の若さを左右する長寿遺伝子や、いつまでも若く健康でいるために今すぐできることとは? 山中伸弥教授の発見が、なぜ若返りを可能にするのか? 「病なき老い、老いなき世界」における人生戦略とは? 最先端科学とテクノロジーが老化のメカニズムを解明。ハーバード大学の世界的権威が描く衝撃の未来。

LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界

【コメント(代理・東洋経済新報社 担当編集者 九法崇さん)】
著者は「老いることは常識ではない」と述べており、未来に対して希望が持てます。人間はテクノロジーや科学によって自分を変えていける存在です。何かに悲観的になったときに、どこか解決策のようなものや、人類の力が感じられる本になるといいなと思っています。

【ビジネス実務部門】『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)

本当の自由を手に入れる お金の大学
『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)

【書籍紹介】
貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う――一生お金に困らない5つの基本。生活・仕事・老後のお金の不安を減らし、自由に生きるためのノウハウが満載です。累計再生数1億回超。チャンネル登録者数90万人(2021年2月現在)の「リベ大」の「お金の勉強」超実践型バイブル。

本当の自由を手に入れる お金の大学

【コメント(代理・朝日新聞出版 佐藤聖一さん)】
本の制作がスタートした時点で650本くらい動画がありましたが、読者に1冊で稼ぐ増やすというお金の力をつけていただくために、0ベースで構成をし直しました。細部にもこだわって作りましたので、両@リベ大学長はYouTubeの配信も毎日されている中、本の制作との同時進行で大変だったと思いますが、お金本の決定版になっていると思います。

【著者・両@リベ大学長コメント】
2年前社員や友人に豊かな人生を送ってほしくて始めたお金の講義がネットを通じて多くの方にご覧いただけて、さらには書籍となり、多くの方にご支持いただいたことを大変嬉しく思います。暗いニュースばかりが目に入りますが、本書がお金にまつわる5つの力を身につけて自由で豊かな暮らしへ行動するきっかけに少しでもなれればこれに勝る喜びはありません。

【特別賞】『人は話し方が9割』(永松茂久/すばる舎)

人は話し方が9割
『人は話し方が9割』(永松茂久/すばる舎)

【書籍紹介】
もう会話で悩まない。疲れない。オロオロしない。本書には、コミュニケーションの基本である会話がうまくいくようになる、ちょっとした、でも多くの人が気づいていないエッセンスが満載。過去に会話で失敗したトラウマもあっさり消え去ってしまうほど、人と話すことがラクになり、人間関係も、人生も、全部がよりよい方向に動き出す本です。

人は話し方が9割

【著者コメント】
2019年の出版以降、順調に売れていましたが、コロナ禍になって人と人との触れ合いが断絶。もうコミュニケーションや話し方の本はダメかなと思っていたら、2月、3月になって逆に数字が伸びました。意外とオンラインの方が、コミュニケーション力が必要とされてきたこと、自分と向き合う時間が増え、この時期に話し方を見直そうという人にハマったのかもしれません。また話し方はスキルよりもメンタルが大切なことも書いています。

【総合グランプリ/政治・経済部門】『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(安宅和人/ニューズピックス)

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(安宅和人/ニューズピックス)

【書籍紹介】
現在の世の中の変化や日本の現状をどう考えるべきか? 企業、すでに大人の人はこれからどうサバイブしていけばいいのか? 子どもにはどんな経験を与え、育てればいいのか? 若者は、このAIネイティブ時代をどう捉え、生きのびていけばいいのか? 国としてのAI戦略、知財戦略はどうあるべきか? AI時代の人材育成は何が課題で、どう考えたらいいのか? 日本の大学など高等教育機関、研究機関の現状をどう考えたらいいのか? 『イシューからはじめよ』から9年――。ファクトベースの現状分析と新たなる時代の展望。

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

【著者コメント】
日本の先行きが見えない中、停滞や諦めを理解しないまま放置しているのは馬鹿げている。現実を直視すれば、我々には相当な希望があると思っています。
また、教育については、組織の歯車や物事を拡大するのではなく、新しいことを仕掛ける側の人を数%でも生み出すことが極めて重要です。さらに、AIのリテラシー向上も必要になってきます。日本は米中の2大国の繋ぎであり2つの文化のブリッジです。これからは英語、中国語は強化し、道具として必須になってくると思います。

【総括】株式会社フライヤーの代表取締役CEO・大賀康史氏

株式会社フライヤーの代表取締役CEO・大賀康史氏

 今年のキーワードは「当たり前からの変化」です。新型コロナウイルスによって、人々の交流や働き方、生活様式まで大きく変わることを余儀なくされました。これまでの常識が通用せず、未知に満たされているような気がします。

 しかし、ダーウィンの有名な言葉で(諸説ありますが)、「この世に生き残る種は最も力の強いものでも、最も頭のいいものでもなく、変化に対応できる生き物だ」という言葉があります。この言葉は、ビジネスパーソンやビジネス書の今を表現している言葉だと思います。

 総合グランプリを受賞した『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』も、まさに変化に対応できる国を目指す内容です。

『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』は、老化は病気のひとつと捉えていて、組織や職業、働き方についても今までの当たり前からの変化に読者の関心が強いのだろうと思います。『心理的安全性のつくりかた』『科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方』『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』これらは、漫然と働いていたら考えが及ばない、ビジネス書らしい名作。そして『本当の自由を手に入れる お金の大学』は、私たちの生活の豊かさを守る貴重な情報が分かりやすく書かれた作品だと思います。

 また、コロナ禍によって特に注目されたのは『人は話し方が9割』。たくさんの人を救った本だと思います。

 今までの常識が通用しなくなり、新しい指針を探す今、ビジネス書は前年比増加傾向であるということは、これからの困難な時代を生き抜くためのビジネスパーソンの希望や意志を表しているように思います。

 グランプリ及び、部門賞受賞書籍は全国の950を超える書店でフェアが展開される。

 想像もしなかった困難な時代を迎えている中、ビジネス書の販売額は前年度を上回っている。今年のビジネス書のキーワードは「当たり前からの変化」。人間は変化に対応できる生き物との力強い言葉を胸に、ビジネスパーソンとしても世の中と関わっていきたい。

■ビジネス書グランプリ https://business-book.jp/

取材・文=松永怜

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