「人を愛するってどんなこと?」内田也哉子が19歳の時に綴ったエッセイ『ペーパームービー』が新装版として復刊!

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公開日:2021/12/4

『新装版 ペーパームービー』(内田也哉子/朝日出版社)

 がんと戦いながら最後まで自分の生き方を貫いた樹木希林と、“ロックンロール”な男・内田裕也の間に生まれた内田也哉子。ハゲシイ家族に囲まれた彼女の人生が、ハゲシイものであることは想像に難くない。そんな内田也哉子が19歳の時に友愛、恋愛、家族愛を描いたエッセイ『ペーパームービー』(朝日出版社)が、2021年11月9日に新装版として復刊された。

 本書は、「この人の言葉をもっと読みたい」「手元に置いておきたい」という声に応え、新しいあとがきを加えた上で発売。「三度目のあとがき」と題された文には、「親であれ、かけがえのない人であれ、命はいつか尽きる。だからこそ、その命が輝いているほんの束の間に出会い、過ごし、共に分かち合えるのは、この世の奇跡なのかもしれない」という内田の心の叫びが掲載されている。

 本文中で内田は、「自分の心が動かされたことを、言葉にするのがあまり好きでなかったことや、そうすることによってその気持ちが消えていってしまう気がした」と吐露。そういうものは自分の心の中だけにとっておきたい“タチ”の少女(子ども)であったと告白している。

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 そんな内田が“書く”ことに惹かれていったきっかけは、「手紙」。目の前に用意した紙に筆記用具で触れ、まっさらなスペースのどこから始めようかと思う瞬間に、自然と体の奥からうれしい感情が沸き上がってくると語っている。内田にとって文章は、限りなく個人的な手紙のようなものなのだ。

 のちに結婚し、3人の子どもをもうけることになる夫の本木雅弘についても、出会ったときに即座に文通相手リストの中にインプットされたらしい。本木からの手紙は繊細で美しい色の光が見え、どんなに微妙な言葉をたくさん並べても、自分にはそのやさしい光は出せないと思ったという。

 なお、YouTubeでは内田本人による「新装版まえがき」の朗読を聞くことができる。1分ほどの動画ではあるものの、『ペーパームービー』の世界観はじゅうぶんに伝わるはずだ。

 女優・満島ひかりは、「希林さんが亡くなったと聞いた日から数日、雨が止まなかった。厳しく温かい音のする浄化の雨は、彼女が世に映してくれた愛の現象のようで涙が止まらなかった。内田也哉子さんの映した10代から今に、これまた涙が止まりません。ビッグスクリーンの愛の映画みたいです。カタチにならない感情や人物たちの勝手さ聡明さが、透明で虹色に生きていて――私にはほーんっとにキマシタ。」と絶賛。また、小説家・高橋源一郎は「ここには『ピュア』なものがある」とシンプルな言葉で推薦メッセージを送っている。

「人を愛するってどんなこと?」という人間としての根源的な問いを、くもりない瞳で綴られた傑作エッセイ。ぜひ手に取って、内田也哉子のみずみずしい感性に触れてみよう。