息の長い漢字ブームの波が、ついにマンガにも!

マンガ

更新日:2012/11/15

 麻生元総理の読み間違いで火がついた近年の漢字ブーム。総理大臣は何人も代わったが、漢字人気は衰えることなく息長く続いている。クイズ番組では連日のように芸人やアイドルたちが漢字問題に挑戦、『漢字一番』(学研)、『漢字メイト』(マガジン・マガジン)、『漢字党』(マガジン・マガジン)、『新漢字王国』(大誠社)などなど漢字系パズル雑誌が人気を集め、清水寺での発表風景が年末のニュースをにぎわす「今年の漢字」はもはや年の瀬の風物詩。資格案内の本で「検定のアイドル」とまで評される漢字検定も、3歳から90代まで年間約200万人が受験、最近ではCGキャラのデジタルアナウンサーとしてフジテレビに就職が決まった杏梨ルネのプロフィールにまで「漢検2級」と書かれている。

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 そんな漢字ブームの波が、マンガにまで及んでいるようだ。今月、漢字を話題にしたマンガが相次いで出版された。

 まずは漢字を操る巫女・マユラが登場する『ヒノコ』(白泉社)。『彼氏彼女の事情』(白泉社)で人気の津田雅美の新作であるこの作品では、マユラが書いた文字が飛び出して現実になるのだ。石に「金」と書けばお金に変わるし、「鳥」と書けば紙の中から鳥が出てきて羽ばたいていく。「縛」と書けば紐や鎖がなくても人を縛り上げられるし、「飛」と書けば空だって飛べるのだ。自分の書いた文字がなんでも現実になるなんてとっても素敵。好きな人にどんな文字を送ろうか考えたり、お腹がすいた時にもいくらでも好きなものが出せるとか、あれこれと妄想は膨らむ。

 しかも、このマンガには読めば漢字の成り立ちやうんちくまで学べる仕掛けが施されている。例えば、二つの手が組み合わさって手と手を取り合う感じを表した「友」や、ものが二つに分かれる絵が字になった「八」に「刀」を加えることでさらに刃物で切り分け、財産を表す「貝」を足すと「貧」になるといった成り立ちまで物語の中に自然と織り込まれている。また、「儿(にんにょう)」や「鳥」のように同じ部首だったり、何か関連している「仲間で覚えるのが一番わかりやすいんだよ」と漢字の覚え方まで丁寧に教えてくれるのだ。難しい漢字や周の時代の金文といった昔の漢字でも、それを絵で見てひとつひとつ解説してくれるので、どういった意味が込められているかまで知ることができる。読んでいると、自分の名前や身近な漢字にはどんな意味が込められているのかといったことまですごく気になってくるのだ。漢字について学んでいる意識なんてないのに、自然と意味や成り立ちまで覚えられる奥深い1冊だ。

 そしてもう1つは、四字熟語の名前を持つキャラが登場する『4じてん。』(平尾リョウ/角川書店)。主人公の喜怒哀楽くんは、文字通り感情の起伏が激しい男の子。そんな彼が通うことになる四字熟王立学園には、四字熟語を名前に持った生徒たちが通っている。鬼のような髪型をしていて見た目はちょっぴり恐いけど、優しい心を持つ鬼面仏心ちゃんや基本的に他人の言うことをまったく聞いていない馬耳東風ちゃん。お面をつけているのでわからないが、いつでもどこでも眠っている生徒会長の白河夜船や周囲を気にせず勝手気ままに振舞う傍若無人くんなど、個性的な面々が登場する。彼らの名前はそのまま性格を表しているので、運否天賦や焦心苦慮といった聞き慣れない四字熟語も意味までバッチリ覚えられる。さて、運否天賦さん、焦心苦慮くんはどんな性格のキャラクターでしょうか? ぜひ本書で確かめていただきたい。

 それに、みんなのまわりにも問題が起こればなんでもズバッと解決してくれる快刀乱麻ちゃんのような子や、お腹がすいたからといって「アツアツのホットケーキをアイスで。」なんて言ってくる無理難題先輩のような人はいないだろうか? そんな人たちにこっそりと四字熟語のあだ名をつけてみるのもいいかもしれない。これなら絶対に四字熟語も意味も忘れないはず。

 楽しく読みながら、漢字や熟語を、その意味や成り立ちまで知れるこの2冊。漢字好きはもちろん、漢字や四字熟語が苦手な人も、勉強の合間に息抜きがてら読んでみてはいかがだろうか?