定番から懐かしいものまで! 読めば必ず食べたくなる、アイスへの偏愛が綴られた一冊

暮らし

公開日:2022/7/30

アイス部手帳
アイス部手帳』(アイス部/幻冬舎)

「アイスは国籍・世代・性別を問わずあらゆる人を笑顔にする『平和の食べ物』だ」と、アイスをこよなく愛する知り合いに言われたとき、「確かにそうかも」と思ったことがあります。今夏は日本だけでなく海外でも記録的猛暑になっていますが、猛烈な暑さの中でも癒しを与えてくれるという意味でも、アイスは「平和」や「平穏」を高確率で人の心にもたらしてくれる食べ物です。

アイス部手帳』(アイス部/幻冬舎)は、フォロワー数約28万人のインスタグラムアカウント「アイス部」がいままでアーカイブしてきた情報が整理された上で、今すぐ買って食べたくなるようなアイスの写真とともに紹介されている一冊です。

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 本書は大きく分けて「コンビニアイス部」「おでかけアイス部」「こだわりアイス部」の3章に分かれていますが、アカウントを運営している「ぶちょー」氏のアイス偏愛は筋金入りで、「コンビニアイス部」の冒頭で既に氏の人生においてアイスがいかに不可欠かが伝わってきます。

1年間で発売されるコンビニアイスは、300種類以上といわれています。新作アイスを買って帰る日は、いつも気分が弾むんです。

大好きな定番アイスは常にストックしておきたいので、家のアイス専用冷凍庫は3台ともパンパン。疲れたカラダに染み渡るロングセラー商品から、記憶に残るアイスまでご紹介します。

「そうそうこれおいしいよね」という定番が定番である所以の再確認から、「そんなシリーズ、味があったのか」という発見までさせてくれる網羅性ある紹介がなされていますが、中でも筆者がユニークに感じたのは販売終了商品が多く紹介されていることです。

 販売終了商品はもちろん本で紹介しても、もう食べられません。著者が本書で実現したいのは購買訴求などではなく、「あれおいしかったよね、また食べたいよね」といった記憶や、「復刻するといいな、この味がまた食べられたらいいな」という希望の共有なのでしょう。その点がふつうの「ガイド本」とは異なる点であると筆者は感じました。

アイス好きにとって、推しアイスが販売終了したときの悲しさといったらありません。
(中略)
あのアイスはもう再販しないんだろうなと諦めかけていた頃に、リニューアルしたり、数量限定で復活したりすることがあるので、推しアイスのことはいつまでも想い続けようと思います。

「推しアイスを全部あわせて100個ほど買った」「旅先のアイスクリームはいままでに2万個以上は食べた」という書中の記述からは、想像以上の偏愛ぶりが感じられ若干ビックリしましたが、不思議と「それはさすがに引きますよ」という印象にならないのはアイスの平和・平穏さによるものなのでしょう。「おでかけアイス部」の章の冒頭に書かれている「2万個食べた」というのは冗談なのではと思い計算してみましたが、1日平均複数個のアイスを数十年食べていればその個数になるとわかりました(100個買ったのが何のアイスだったのかは、ぜひ本書を実際に手にとって確認してみてください)。

 アイスの歴史、アイスクリーム・ソフトクリーム・ジェラート・シャーベット・ラクトアイス等の分類といったそもそも論、トリビアなどが特集されたコラムをまじえながら展開されていく本書の最後には「トレンド予測」ともいえる、「アイス部」の近頃の興味・関心をまとめた「こだわりアイス」の章があります。チョコミントアイス、チーズアイス、低カロリーアイスなどがとりあげられている中で、暑い夏に特にオススメされているのがスーッとした後味が爽快なチョコミント(一方で「販売時期に大量注文して1年かけて食べるほどおすすめ」と書かれているチョコミントアイスもありますが……)ということで、筆者は本書を読んだ後にチョコミントリストの中のひとつを早速買いに行きました。読者の皆さんも、アイスへの熱い愛を本書から感じた後に、気になったアイスを食べて涼しく平和な心地になってください。

文=神保慶政

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