安倍晴明と源頼光の子孫コンビが織り成す平安怪異ミステリー。源氏物語の幻の巻の行方やもののけに憑かれた少年の謎を、論理派陰陽師とお人よし武士が解決!

文芸・カルチャー

公開日:2023/1/15

今昔ばけもの奇譚 五代目晴明と五代目頼光、百鬼夜行に挑むこと
今昔ばけもの奇譚 五代目晴明と五代目頼光、百鬼夜行に挑むこと』(峰守ひろかず/ポプラ社)

 2023年1月4日、ポプラ文庫ピュアフルの話題作『今昔ばけもの奇譚』シリーズ第2弾『今昔ばけもの奇譚 五代目晴明と五代目頼光、百鬼夜行に挑むこと』(峰守ひろかず/ポプラ社)が発売された。“論理派陰陽師×お人よし武士”が織りなす平安怪異ミステリーに、早くも読書家から熱視線が注がれているようだ。

 タイトルにある頼光(源頼光)といえば、酒呑童子(しゅてんどうじ)を倒した豪傑として知られる英雄。しかし、その子孫である源頼政は和歌が好き&お人好しでどこか頼りない。シリーズ第1弾となる『今昔ばけもの奇譚 五代目晴明と五代目頼光、宇治にて怪事変事に挑むこと』は、そんな頼政が関白より宇治の警護を命じられるところから物語の幕を開ける。着任早々“橋姫を名乗る女を追っ払ってほしい”と頼まれる頼政。もちろん彼一人ではどうすることもできず、途方に暮れていたところ、かの安倍晴明の子孫・安倍泰親が現れるのだった――。

 論理派少年陰陽師こと泰親と、お人好し若武者である頼政がコンビを組み、宇治で起きる怪異事件に次々と挑んでいったシリーズ第1弾。SNS上には「ただのミステリーに終わらない不思議な余韻が味わえる一冊」「サクサク進むストーリーの構成と軽妙な登場人物の絡み合いは、既存のファンも新規の読者も分け隔てなく楽しめると思う」「あっという間に読み終えてしまった。それくらい夢中になれる作品」といった反響が続出し、大きな話題に。

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 そして今回発売された最新作は、源氏物語の幻の巻であるという「雲隠の巻」の行方や朱雀大路の奇妙な噂、山に入るものを殺す神の存在などを描いた、全5つのエピソードを収録。たとえば第1話「もののけと少年」では、もののけに憑かれているという貴族の少年・高平太が頼政の元を訪れる。一見どこも問題なさそうな彼だが、毎晩夜が更けると、まるで獣のように大声で唸りながら暴れまわるというのだ。

 彼のもののけ落としの儀式を行うため、京から同行した験者こそが少年陰陽師・泰親。奇しくも再会を果たした2人は新たな怪異事件に巻き込まれていくことになり、第5話では都を脅かす“天狗”と対峙することに――。前作に引き続き、今作も波乱の展開が待ち受けている…。

 余談だが、作者の峰守ひろかず氏といえば『絶対城先輩の妖怪学講座』『お世話になっております。陰陽課です』など“怪異”や“妖怪”をテーマにした作品を数多く手掛けてきた人物。大人気アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第6期)のノベライズ版を担当した際には、「峰守先生×鬼太郎はベストマッチ過ぎる!」と大きな反響を巻き起こしていた。そのため「今昔ばけもの奇譚」シリーズに期待する読書家も少なくない様子。きっと今後は、さらに注目を集める作品になっていくはず。

 果たして凸凹の子孫コンビは、無事に怪異事件を解決できるのか…。結末が気になる人は、2023年最初の一冊として、ぜひ同作を手に取ってみてほしい。

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