新学期で不安を抱く子どもたちへ。教えたい「これがいえればだいじょうぶ」な3つの言葉

出産・子育て

公開日:2023/4/13

こころってなんだろう
こころってなんだろう』(細川貂々/講談社)

「新しいクラスに馴染めるかな」「隣の子と仲良くできるといいけど」など、新学期に不安を抱えるお子さんは少なくない。どうしたら不安を取り除いてあげられるだろうか。

こころってなんだろう』(講談社)は、映画化もされた『ツレがうつになりまして。』や水島広子医師との共著「それでいい。」シリーズなど、「こころ」をテーマに数多くのベストセラーを描く細川貂々氏による、「こころ」についてやさしく学べる絵本。“こころの仕組み”を学び、自分の気持ちとうまく付き合えるようになれば、子どもが安心して学校生活を送ることができるかもしれない。

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こころは「きもち」と「きおくのひきだし」でできている

こころってなんだろう p.16

こころってなんだろう p.17

「こころ」にはカタチがなく目にも見えないけれど、誰にでもあって、どれも同じように動いている、と本書で細川さんはいう。こころはいろんな人に会うたびに動いて、いろんな「きもち」が生まれていく。しあわせな気持ちもつらい気持ちもあるけれど、どちらも大切で、それを自分で知っておくことがとても大切なのだそうだ。

 さらに、気持ちは「コトバ」を使って誰かに伝えることができる。「さみしい」と誰かに伝えれば自分が安心できるし、「苦手だからイヤだ」と伝えれば、誰かが助けてくれたり、他の人と力を合わせたりすることができるのだと、本書には綴られている。

 このことから、自分の気持ちを言葉で伝えない限り、「さみしい」気持ちをなぐさめてもらえないし、「たすけてほしい」気持ちをわかってもらえないのだ、と細川さんは描く。

とりあえず
「たすけて」「ありがとう」「ごめんなさい」
これがいえればだいじょうぶ

 言葉を伝えるのが得意じゃない子や、他の人に甘えるのが苦手な子は、自分の気持ちを封印しがち。けれど、誰かに伝えることが大切だと知れば、もっと前向きになれるかもしれない。まず、この3つの言葉から言えるように、家庭内で練習してみてはどうだろうか。

こころってなんだろう p.20

こころってなんだろう p.21

 また、こころとは「きおくのひきだし」で、できているという。記憶の引き出しには、「たのしい」「かなしい」「できた」など、自分が今までに経験したことが入っている。それがたとえ「しっぱい」の引き出しであっても「今度はこうしよう」という挑戦につながるから、決して無駄ではないことがわかる。

 さらに記憶の引き出しは、自分の経験がもとになっているから、人によって違う。「学校がスキ」な子がいれば「学校がキライ」な子もいて、「だから時々ケンカしちゃうんだね」と細川さんは綴る。誰かとケンカをしても、「記憶の引き出しが違ったのかな」と思えば、なんだか相手を許せてしまいそうだ。

こころに惑わされず、“こうしたい”と思ったことをやってみよう

こころってなんだろう p.28

こころってなんだろう p.29

 何かを迷っているときに大切なのは、「こころにまどわされない」ことだという。たとえば、仲のいい友だちと仲直りしたいとき、あやまりたいと思うのに、「ゆるしてもらえなかったらどうしよう」とこころがぐるぐるして、本当の気持ちを伝えられないことがある。これが、こころに惑わされている状態。

 自分が「惑わされている」ことに気づいた上で、こうしたいと思ったことを勇気を出してやってみよう、というのが本書の教訓だ。あやまってしまえば意外とあっさり仲直りできた、とは、よく聞く話である。子どもが悩んでこころがぐるぐるしているときに伝えてみたい。

 子どもは特に、自分のこころのことがよくわからず、こころに惑わされて深刻になりすぎるそう。こころは、あくまで幻のようなもの。振り回されないことで、困難にぶつかっても深刻になりすぎず、傷つきにくい子どもになる。これによって、大人になってからも柔軟に生きやすくなるという。

大切なのは自分のきもちに
すなおになること。
こころが自分のまわりの
世界をつくるよ

 大切なのは「すなおになること」だとすれば、ちょっと不器用な子どもでも、少しずつ練習することで自分の気持ちとうまく付き合っていけるかもしれない——そんな希望が見えてきた。それに、いろんな人と関わって記憶の引き出しを増やしていくことは、とても素敵なことなのだと、本書が教えてくれる。

こころの仕組みを知って、自分に自信が持てる子どもに

こころってなんだろう p.30

こころってなんだろう p.31

 本書によれば、こころはいつもくるくる動いているから、今は悲しくても、また笑える時が巡ってくるという。子どもが悲しそうにしていたら、「次はきっと笑えるようになるね」という声がけで、勇気づけてあげられるかもしれない。

 大人もまた、“悲しみはいつまでも続くわけではない”というこころの仕組みを知っておけば、たとえ落ち込んでも“また笑える時がくる”と立ち直ることができそうだ。

 本書は可愛らしいイラストとわかりやすい言葉で、子どもが自分ひとりでも読める作りになっている。まだ幼い子どもたちにとって、世の中はきっとわからないことだらけ。本書で自分や友だちのこころの仕組みを知り、不安をすこしずつ取り除くことで、自分に自信が持てる子に育ってくれたら…と感じている。

「たすけて・ありがとう・ごめんなさいが言えるからもう平気」「今はつらくてもまた楽しくなれるから大丈夫」と、笑顔で学校に通う子どもたちが増えることを願うばかりだ。

文=吉田あき

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