日本人の「約3割」が睡眠に不安。睡眠薬だけじゃない、62のQ&Aで学ぶ不眠・睡眠障害の治療大全

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公開日:2023/8/7

名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全
名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全』(監修・井上雄一/講談社)

 眠れない日々が続く「不眠」で悩む人たちは、少なくない。現代の日本では「人口の約3割が眠りに関してなにかしらの不満をもっており、約1割は病気」と指摘するのは、睡眠のあらゆる悩みに答える書籍『名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全』(監修・井上雄一/講談社)だ。

 医師が監修する本書は、Q&A方式で分かりやすく展開する。その内容をもとに、不眠症とは何か。そして、対策にある睡眠薬服用時の注意点や、薬の服用にためらう人に向けた代替治療の事例を紹介していく。

「日中の生活」に支障が出るなら医師に頼る必要も

 本書によると、不眠の症状は大きく3つに分かれる。寝ようとしても寝付けない「入眠障害」、夜中に何度も目を覚ましてしまう「中途覚醒」、朝早くに目覚めて眠れなくなる「早期覚醒」だ。さらに、病院で「不眠症」と診断される場合は以下のとおり、2つの条件があるという。

 条件の一つは「眠るための機会があり、その環境も適切に整えられているにもかかわらず、入眠障害や中途覚醒などの症状によって、睡眠の量や質が十分ではない状態にあること」。もう一つは「不眠の症状があるだけでなく、それによって眠気やだるさなどが生じて日中の生活に影響していること」だ。

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 日々、眠れない状態が続いていても「いつの間にか自然に治る人」もいる。しかし、なかには「昼間の体調に影響が出てしまう人」もいて、このような場合には専門医の治療が必要なケースもある。

 実際、不眠症の場合は「寝つきが悪くなる」「夜中に何度も目が覚める」となった上で、「ぐっすり眠れない」感覚をおぼえるのが段階的に生じ、さらに、体調や気分の浮き沈みなどを伴う「うつ病であれば、これらが「短期間で急激に悪化し、ほぼ同時期に現れる特徴」もあるという。そのため監修者は、「2週間以上不眠が続いているときは早めに受診することが大切」と訴える。

睡眠薬は「服用のタイミング」に気をつけるべき

 不眠症の対策として、活用されるのが「睡眠薬」だ。実際、診断されたのちに「睡眠薬はクセになるからいやだ」「何となくのむのが怖い」と不安を抱く患者もいるというが、2000年代以降、「メラトニン受容体作動薬や、オレキシン受容体拮抗薬など」の登場で薬の「安全性」は高まったという。

 ただし、医師の指示を守って適切に服用しなければならない。本書でも、注意点が複数紹介されている。例えば、「服用のタイミング」は重要だ。睡眠薬の多くは「服用後10〜30分で眠気」が生じるため、早い時間に飲んでしまうと寝ている間に薬の効果が切れて、変な時間に起きてしまうおそれもある。また、服用後は「眠気やふらつき」が起こるのもリスクのため、効果が出るまでの「時間を考慮し、寝床に入る直前に服用」するのがいいという。

 また「アルコールと一緒にのまない」のも、注意するべき点だ。これは「ふらつきや記憶障害、異常な行動の原因」になりかねないためで、本書では「厳禁」だと強く主張している。もしアルコールを飲むなら、晩酌を終えてから睡眠薬をのむまで「時間をあける」よう心がけておきたい。

薬の治療に不安があるなら医師に相談の上で“薬以外”の選択肢も

 睡眠薬の服用にどうしても不安を抱える場合には、「薬物療法以外の方法」もある。いわゆる「認知行動療法」と呼ばれるものだ。「睡眠薬だけに頼りたくない人」だけに限らず、薬の服用と並行すれば治療を早める効果も期待できるという。

 本書では複数の方法を紹介しているが、「刺激制御法」はその一例だ。不眠の症状を抱える人は「数週間、数ヵ月」と長期間にわたり状態が続いていることで、寝床へ入るとかえって目が覚める、寝つきが悪くなるといった状態になってしまうおそれもある。そこで寝室に「寝るとき以外には入らない」などで、寝室を「眠るための場所」として体におぼえさせる療法がある。

 また、「睡眠制限法」も療法の一例で、これは「2週間分の平均睡眠時間をもとに、その時間プラス 分だけ寝床にいるように制限する方法」だ。

 不眠症を抱える人は「少しでも寝ようとして長い時間寝床で横になりがち」だが、その行動がかえって睡眠を妨げてしまう。そこで寝床での時間に制限をかけ、「決めた時間の85%以上眠れる日が5日以上続いたら、寝床に入る時間を15分早める」のを繰り返し、いずれ「自分が必要なだけ眠れるよう」な状態に改善する方法もある。

 さて、不眠や睡眠障害の基礎知識やアドバイスを、全62のQ&Aで教えてくれるのが本書だ。眠れなくなるほど参考になる情報ばかりだが、読む際はほどほどに。自身に必要な項目をおさらいして、安眠できる環境を手に入れよう。

文/カネコシュウヘイ

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