社会に害をなす人間たちを抹殺する会社『株式会社 神かくし』ターゲットを消す方法がホラーすぎる!

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公開日:2023/8/14

株式会社 神かくし
株式会社 神かくし』(片山陽介/少年画報社)

 放課後の薄暗い校舎で、あるいは夏祭りの帰り道で、突然、そこにいたはずの人が消えてしまう。連絡はつかず、どこを探しても見つからない。まるで忽然とこの世から消え失せてしまったみたいに。そんな現象を「神かくし」と呼ぶ。

株式会社 神かくし』(片山陽介/少年画報社)は、そんな「神かくし」をテーマにしたダークサスペンスだ。ただし、主人公が神かくしに遭ってしまうわけではない。本作で主人公を務めるのは、市井の人々を神かくしに“遭わせる”側の人間。一体どうやって……? そう思ったが最後、読者はこの奇想な設定の世界観にどんどん引き込まれていく。

 本作の舞台となるのは、タイトルにもある「株式会社神かくし」。飄々とした態度で関西弁を喋る〈社長さん〉、有能な秘書兼経理の〈お嬢〉、大柄で肉体労働者風の〈ミノさん〉の3名が働いている小さな会社だ。3人はパッと見、どこにでもいるような人たち。むしろ“善良な人たち”にすら見えるかもしれない。しかし、社長さんたちの業務こそが「神かくし」。そう、依頼を受け、ターゲットをこの世から抹殺することを生業としているのだ。

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株式会社 神かくし

株式会社 神かくし

 ターゲットをこの世から抹殺すると聞くと、掃除屋や暗殺者といったワードが思い浮かぶだろう。ターゲットを殺害し、死体をバラバラにして処分する。あるいは人が踏み入れることのない山の奥に埋める、コンクリート詰めにして海に沈める……。とにかくそういった手段をイメージする人は少なくないはずだ。ところが、どれも当てはまらない。株式会社神かくしの面々は、実に不可思議な方法で依頼を遂行する。

 彼らがターゲットを消すときに利用するもの――それは“神々”と呼ばれるものたちの存在だ。ときに怪異や化け物、幽霊などと呼ばれ恐れられることもあるかもしれない。いずれにせよ人知を超えた存在を使い、社長さんたちは人間を消してしまう。

株式会社 神かくし

 たとえば第1話に登場するのは“山の神”。巨大な蛇のような身体に角の生えた人面を持つ、まさに異形の怪物である。“生贄”になった人間を騙し、大きな口で喰らってしまう。第2話にはいくつもの生首を携えた武士のような怪異が現れ、第3話では幼女の姿をした幽霊が登場する。

株式会社 神かくし

 どれもこれもおぞましい姿形をしており、正直、関わりたくないとさえ感じるほどだ。しかし、この神々は社長さんたちにとっての“お客様”。先に株式会社神かくしの業務を「依頼を受け、ターゲットをこの世から抹殺すること」と説明したが、正確に言うならば、彼らは「お客様となる神々が欲するものを用意し、紹介すること」を仕事にしている。ここで言う“欲するもの”とは、つまり人間だ。

 ただし、社長さんたちは闇雲に人間を差し出しているわけではない。彼らが神々に捧げるのは、社会に害をなす人間たち。詐欺行為で人を傷つける者、我が子を虐待する者、信者を騙し私腹を肥やす者……。徹底的に調べ上げ、「神かくしに遭ってもらった方がいい」と判断した者を供物にしているのである。

 もちろん、彼らのしていることに賛否両論はあるだろう。どんな人物であれ、生命を奪ってしまっていいのか。更生の機会を与えるべきではないか。しかしながら、圧倒的な悪を罰していく彼らの姿に爽快感を覚えてしまうのも事実。弱者を食い物にするどうしようもない悪人を神々の生贄に捧げ、この世から消してしまう。そんな彼らは、いわゆるダークヒーローだ。

 ちなみに、第1話のラストで、株式会社神かくしに新入社員である影井新太が入社することになる。彼は元々生贄候補だったのだが、被害を免れ、なし崩し的に社長さんたちと働くことになった立場だ。そして物語はこの影井の目線で語られていくため、読者は必然的に「何も知らない、理解していない影井」と自らを重ねることになる。その構成によって、物語の謎や不可解さを少しずつ理解できるようになっている。

株式会社 神かくし

 株式会社神かくしが取り引きする“神々”とは一体なんなのか。どうして社長さんは彼らと関わるようになったのか。ダークヒーローである彼らの活躍を楽しみながらも、本作に秘められた謎の深淵に迫ってもらいたい。

文=イガラシダイ

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