両親を亡くした四兄弟のほっこり物語がアニメ化。社会人の長男、バランスをとる次男、やんちゃな三男、小学生四男が助け合う!

マンガ

更新日:2023/12/12

柚木さんちの四兄弟。
柚木さんちの四兄弟。』(藤沢志月/小学館)

 僕は、平日昼間に放送されていた「花王愛の劇場シリーズ」のホームドラマが好きだった。ドラマを見ながら、まるで自分もその家の子どもになったかのような気分になったり、登場人物たちの気持ちに同情したりと、子どもながらに感情移入してほんわかした気持ちになったものだ。大人になり、そういうアットホームな番組を見ることがなくなったが、『柚木さんちの四兄弟。』(藤沢志月/小学館)を読んで、子どもの頃に感じていたほんわかした気持ちを思い出し、懐かしくなった。

 本作の主人公は4人。長男で社会人の隼、次男で弟が大好きな中学1年生・尊、尊と11か月違いで生まれ同じ中学1年生の三男・湊、小学1年生なのにしっかり者の四男の岳だ。彼らは数年前に両親を亡くし、いまは4人で助け合いながら生活している。家庭の中心を担うのはもちろん隼。弟たちの親代わりになるべく仕事と家事に奮闘するが、ひとりで色々と背負い込んでしまいがちな面がある。尊は、いつも兄と弟の中間に立って家族のバランスをとっている縁の下の力持ち的存在。湊は11か月先に生まれた尊にライバル心を抱きながらも、家族のムードメーカー役だ。岳は「本当に小学生?」と聞きたくなるほどのしっかり者だが、兄たちに迷惑をかけたくないと自分の気持ちを押し殺してしまうことも。本作では、そんな個性豊かな4兄弟の暮らしぶりが描かれていく。

 1巻の第1話は、隼にひとりの大人として認められたいと葛藤する湊の話だ。同学年の尊は、兄に朝の洗濯など大変な家事を任せてもらえているのに、自分は何もやらせてもらえず早く学校に行けと言われてしまう。尊も学校に行かないといけないのに……。2人の扱いの差に不満を抱く湊は、仕事と家事で疲労困憊の隼を少しでも助けようと、あることを試みる。しかしその行動がきっかけでトラブルが起きてしまい……という、まさに思春期の男の子っぽさと家族系の作品には欠かせない要素が惜しみなく存分に描かれている。

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 ここまでの話だと良からぬ結末を想像しそうだが、安心してほしい。本作はどの話もほんわかしていて明るい。作中では何度も両親不在の寂しさがきっかけのトラブルが起きるが、必ず兄弟の誰かが支えとなり、励まし、解決の糸口となってくれる。小学生の岳が支えになるのか? と思うかもしれないが、1巻では隼の心の機微を一番敏感に察知し、彼ばかりに負担を背負わないように働きかける。最も大人びているのは岳だと言っても過言ではない。そんな他者の気持ちが汲み取れる兄弟が間に入るからこそ、どんなトラブルも円満に解決するのだろう。4人が「楽しく暮らしていこう」と前向きな気持ちで日々を過ごす姿は、読み進めていてとても気持ちがいい。こんな家族が身近にいたら、つい応援したくなる。

 ちなみに本作は、2023年10月から毎週木曜日24:00よりアニメ版が放送中だ。漫画の中から感じる4兄弟の可愛さや愛しさは、アニメにもしっかり引き継がれている。しばらく家族系の作品がご無沙汰な人にこそ、グッとくるものがあるはずだ。

文=トヤカン

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