駅でよく見る可愛い女の子は男子高校生!? 懐かしく可愛い持ち物に37歳の乙女趣味オタクおじさんが大歓喜

マンガ

更新日:2024/2/23

今日、駅で見た可愛い女の子。
今日、駅で見た可愛い女の子。』(さかなこうじ/フレックスコミックス)

 サン宝石、ミルボン、プチコロン……、小中高のどこかで憧れた、使っていたという人もいるはずだ。これらは女子のものと思う人も多いだろう。女子はピンク、可愛いレースやアクセサリーが好きというイメージがないだろうか。しかし、男子が好きだってかまわないはず。常日頃から、これはこの性別のものだという偏見や固定観念にとらわれ、そういうものだと思わされているのかもしれない。しかし、まわりの目を気にせず、好きなものは好きだと言って、自由に身に着けられるだろうか。

仕事に疲れたサラリーマンが憧れるのは「一分の隙もないまさに理想の女子高生」

 仕事に追われる編集者の亀山正太郎(かめやま・しょうたろう)37歳は、駅のベンチに座っていると、とびきりおしゃれで可愛い女の子を見つける。そこから、彼の乙女趣味への興味とオタク知識が溢れ出していくマンガが、『今日、駅で見た可愛い女の子。(1)』(さかなこうじ/フレックスコミックス(株))である。本書は、10代の頃を思い出すアイテムが次々と登場するが、それをバッチリ身にまとい自分のものとしているのは、女の子にしか見えない男子高に通う男子高校生だ。

 この話の驚くべきところは、駅で見かける可愛い女の子が、亀山には一切男子と気付かれない完璧なスタイルだということ。バイト代をおしゃれにつぎ込み、手入れの行き届いた良い香りのするロングヘアーにメイクも完璧だ。クラスに1人は必ずいたおしゃれな子を思い出す。

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 亀山の詳しさとオタクっぷりも負けてはいない。セボンスターというアクセサリーが付いている玩具菓子が登場するが、値段やアクセサリーの種類まで把握している。女の子がセボンスターを持っていることにテンションが上がり、仕事が捗るくらいである。

「俺は君のような、ミルボンが似合う女の子に生まれたかったです」おっさんが感じる可愛い女の子の文化が好きだという難しさ

 亀山と女の子の対比も見どころだ。プチコロンという香り付きカラーペンとパステルカラーのハイブリッドミルキーを女の子は持っており、男子校に何十年も勤める先生もビックリするカラフルなノートを作成している。しかも見やすい。亀山はそのノートを見て、

“プチコロンとハイブリッドミルキー持ってるとかなんなん?夢色のペンケースじゃん こんなん日常が 日常が彩られるんだが”

 とテンションが内心爆上がりする。しかし、彼自身は、

“今も昔も黒と赤しか手に取れないな”

 というところに、興味があるものを素直に手にとれない切ない気持ちを感じとれる。彼自身が、女子高生の文化が好きで、本当は駅の可愛い女の子のようになりたかったのではないかと思わされる。しかし、自分で自分をおっさんと言ってバイアスをかけてしまう亀山には、好きなことを好きと言い、身にまとうことが難しかったのではないだろうか。いい香りのハンドクリームをつけたことを会社で見つけられただけで、ビクッとするくらいである。本来の自分ではなく、社会で求められる自分を演じているのではないだろうか。もう少し好きなものに素直になってもいいのではと思いつつ、彼の詳しさには尊敬の念すら覚える。

 本書は、女の子の持ち物やスタイル、チャイボーグメイクなど近年の流行りから、過去に流行ったものまで、今も昔も関係なく楽しめるラインナップになっている。次はどんなものが登場するかをワクワクしながら、駅の可愛い女の子を観察し、亀山の解説に感心しながら読み進めていける。おしゃれをし流行りの物を持つことが楽しくて仕方が無かった10代の頃の懐かしさを共感しながら楽しむことができる。いや、10代の頃と決めてしまうことも思い込みだろうか……、誰でも心をときめかせて取り入れられる乙女アイテムに満ちている1冊だ。

文=山上乃々

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