動物たちの温かい言葉に心を救われる絵本。絵と言葉に愛を感じるベストセラー絵本『きみのことがだいすき』

文芸・カルチャー

公開日:2024/2/18

きみのことがだいすき
きみのことがだいすき』(いぬいさえこ/パイインターナショナル)

きみのことがだいすき』(いぬいさえこ/パイインターナショナル)という本を知っていますか? 発売から約2年が経った今でも絵本や児童書の売れ筋ランキングにランクインしている、まさにベストセラーと言える一冊です。

 舞台は動物たちが暮らす森。表紙に登場するリスをはじめ、ウサギやネズミ、タヌキなど小さくて、ほわほわしていて、触り心地がよさそうな……見ているだけで癒される、かわいい動物たちが登場します。また本書はメッセージ絵本とも呼ばれるもの。お話が展開していくのではなく、詩のような一言ずつのメッセージが綴られていきます。動物たちが悲しんでいる子や立ち止まっている子に言葉をかける形で、心温まる言葉たちが紡がれるのです。

 ひとまず5歳と小1(7歳)の子どもたちに読み聞かせてみましたが、特に長男の方がじんわりと心に沁みていた様子。本人曰く『がんばらなくてもあなたは、よいこ 今のあなたはそのままで、よいこ』という言葉が一番印象に残ったとのこと。実は小学校入学以降「僕はこんなことが苦手、できない」とこぼすようになった長男。他者と自分を比べる機会が増え、自信をなくしていた様子でした。私もそれとなく「そんなことないよ」と言ったりしていたのですが、絵本からの『そのままで、よいこ』というメッセージはダイレクトに心に響いたようです。次男も「動物がかわいい」と引き込まれてはいましたが、メッセージ自体は小学生以上の子どもの方が伝わりやすいように感じました。

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 しかし読み聞かせているうちに、一番感極まっていたのは私だったかもしれません。そのままの自分を、そして自分の感情を丸ごと受け止めてくれるような言葉たち。それは私が子どもたちに伝えたい言葉であり、同時に私自身が言われたい言葉でもありました。特にはっとしたのが『やさしい きみが 理由も ないのに おこったりしないの、知ってるよ。……さみしかったんだね』という言葉。今はもう収まっていますが長男は小さい頃癇癪がひどく、私はいつも『なんでそんなに怒っているんだろう』とイライラしていました。しかし彼はまだうまく言葉が出ないから「悲しい、辛い」などいろいろな感情を癇癪という形で表現していただけで、怒っていたわけではないのかもしれないと思ったのです。「子どもを大切に思うからこそ、子どもが泣いたり叫んだりしているとストレスを感じてしまう」とどこかで読んだ記憶がありますが、その時の私に、そして長男に言ってあげたい一言でした。

 本書はプレゼントとしても人気が高いのも特徴。恋人へ、友達へ、すでに独り立ちした子どもへ。普段は照れくさくて言葉にできない愛を相手に伝えることができるでしょう。また、「相手が落ち込んでいてなんと声を掛ければいいのかわからない……」というときも、この一冊を手渡せば言葉をかけるよりも相手の心を救うことができるかもしれません。

 最後のページにはメッセージを書く欄もついているので、大切な人に、メッセージとともに渡してみてはいかがでしょうか?

文=原智香

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