なぜ婚活で「普通の人」でいいのに、出会いがないのか? 恋愛・人間関係 日常の問題は「経営」の観点で解決できる

ビジネス

公開日:2024/3/24

世界は経営でできている(講談社現代新書)
世界は経営でできている(講談社現代新書)』(岩尾俊兵/講談社)

 新書としてヒットしている『世界は経営でできている(講談社現代新書)』(岩尾俊兵/講談社)。東大初の経営博士である著者による「世界の見方がガラリと変わる思考のレッスン」と銘打たれている。

 経営という単語を自分とは縁遠いものだと思うかもしれないが、「本当は誰もが人生を経営しているのに、それを気づく人は少ない」との理念のもと、愛や信仰、虚栄など、人生のあらゆるものは経営でできていると説く。何やら難しそうと思うかもしれないが、「令和冷笑体」と自ら命名した語り口はまるでエッセイのようで非常に読みやすく、面白い。さくさくと読み進めているうちに、いつの間にか自分の傲慢や勘違いに気づかされたりする。

なぜ私たちは恋愛で「普通の人」に出会えないのか

「経営でできている」のは日常や、人間関係など本当に身近なことで、例えば「家庭」の章では、なぜ夫と妻が対立してしまうのかが明快に語られる。

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 特に面白かったのが、恋愛の章にある、なぜ私たちは「普通の人」と出会って恋愛することができないのか、を語る「魔の谷:理想の恋愛不可能性定理」だ。

 パートナーを求める人間、特に婚活真っ最中の人間は「普通の人でいいのに、出会いがない」と言ってしまいがちだ。普通の人とは……と頭を抱える人も少なくない。それについて、ざっくりとした数字で説明されていた。恋愛についてこだわる要素があったとき(仮に「優しい」を要素とする)に、目の前の人が「平均以上の性能を発揮できる確率」は、上位半分に入る確率と等しいので、2分の1の確率で平均以上の優しい人に出会えるはずだ。しかし大抵の場合、その他にもゆずれないこだわり要素があるものだ(例えば、家事をひとりでできる)。またその条件に当てはまるかどうかも2分の1。ただし、誠実で家事ができる人を求めると、その確率は2分の1×2分の1になる。

恋愛において普通の人と出会えない理由は「ある人が自分にとっての普通の人である確率=『二の自分がこだわる要素数乗分の一』だから」である。

 10個のこだわりがあるなら約1000人に1人、こだわり要素が20個あれば約100万人に1人しか普通の人は存在しない計算になるそうだ。気が遠くなる。しかも、その人が自分を好きになってくれるかどうかはまた別の話……。

日常に潜むもやもやが少し晴れるかもしれない

 SNSが普及し、社会は大きく変化した。SNSで成り立つ職業が登場してきたし、SNSで命を失ってしまった人もいる。とりわけ可視化されたのは「マウンティング」ではないだろうか。

 SNSで悩む人に見てもらいたいのが、「尊敬を無尽蔵に生み出す」という解決方法。当たり前だが、なかなか気づけない方法だ。詳しくはぜひ読んでみてほしい。

 ちなみに、どうしてかこの本は、SNSで「これまで読んだ中で最高のエッセイ」と写真付きで紹介されていることが極めて多い。その理由は、尊敬を生み出す練習のひとつとして、著者がお勧めしているからである。なんともうまい手口ではないか。

 仕事、就活、人間関係……あなたが抱えるもやもやとした悩みに対し、思わぬ解決の糸口が見つかるかもしれない。

いつの間にか自分の思考の傾向やクセに気づかされる

 最初から最後まで、面白く読み進めているうちに、自分の思考の癖や偏り、またできていなかったこと・できていたことに気づかされる。

 わかりやすさと学術書としてのテーマの両立をしっかりと両立させているこの本、新書に触れたことがないという人にもおすすめである。

文=宇野なおみ

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